狂犬むーたんの限界

むーたんにワンコ友達を作ってあげたくて色々試してみましたが、そんな私の気持ちと裏腹にむーたんの犬嫌いは年々激しくなってきました。特に、自分のお庭と思い込んでいる近所の境内で他のワンちゃんに会うと、相手が自分よりはるかに大きな子でも、なんとか境内から追い出そうと果敢に立ち向かっていくのです。

むーたんのお庭

仲良くできない…

怖がりな子犬むーたん

むーたんは子犬の頃、なにもかもが怖い子でした。お家にもなかなか慣れない、人間も怖い、お外も怖い…。当然他のワンちゃんも苦手でした。でも、少しずつ慣れる練習をした結果、おうちもお外も大好きになったので、いつか犬友達もできるだろうと思っていたのです。それで私はドッグランへ連れて行ったり、友人の家のおとなしいチワワと引き合わせたり、お散歩中に犬を見かけるとおやつをあげていい印象を持たせようとしたり、色々と工夫を重ねてきました。

ドッグランは大失敗でしたが…。)

強いおとなに成長する

しかし、むーたんはいつまでたっても他の犬に対してなかなか心を開いてくれません。それどころか、だんだん「イヤ!」「嫌い!」という気持ちをはっきり示すようになってきました。自分の気持ちをきちんと主張できる、強いおとなの女性になったのでしょう。初対面かつ積極的な相手に対しては、容赦無く「よるな!」「くるな!」と態度に示すようになりました。

むーむーアタック

この頃のむーたんは、グイグイくる相手には容赦なかったものの、相手がおとなしい子であれば普通に挨拶できていました。ある日、向こうから飼い主さんに連れられた可愛いトイプーちゃんがやってきました。挨拶しに近づいてくれたトイプーちゃんの様子を見て、私は「この子はおとなしそうだから大丈夫だ。」と思いました。

しかし、相手がクンクンとお鼻をむーたんの顔に近づけてきたそのとき…

 

 

パクーーーーーッ!!!

突然むーたんが相手の鼻先に噛み付いたのです。

トイプーちゃんも飼い主さんもびっくり。私もびっくり。。

「すみません!すみません!!大丈夫ですか?!本当にすみません!!」

必死に謝り、トイプーちゃんの様子をうかがいます。幸い、怪我はしていなかったようですが、相手は怒った様子で足早に立ち去ってしまいました。

もーーー、最悪だ〜〜〜〜;;

相手はとってもいい子だったんです。むーたんも普通にクンクン挨拶していたので、「あ、よかった。大丈夫そうだ。」と思った次の瞬間でした。このことがあってから、私はむーたんを他の子に近づけるのがすっかり怖くなってしまったのです。

狂犬むーたんは身の程知らず

挨拶したくないむーたんと、挨拶したい私

最近は向こうから挨拶に来てくれてもお断りするようにしています。フレンドリーなワンちゃんが挨拶しにきてくれても、「すみません、うちの子狂犬なんです。噛むかもしれないのですみません。」とお断りしています。でも、できれば私は挨拶したいので、いけそうなときは片手でむーたんのリードを短く持ち、もう片方の手で相手の子を「ごめんねごめんね〜。」ってなでなでさせてもらうこともあります。

ダメ元の挨拶

ただ、そうやってお断りしていても、たまに「いいのよ、うちの子は大丈夫だから〜。」と言ってくださる心優しい飼い主さんがいて、ダメ元で挨拶させてもらうことがあります。むーたんと相手の様子を恐る恐る見守る私。向こうの飼い主さんはずっとニコニコしています。相手が近寄ってきただけでむーたんのお鼻がヒクヒクして、小さい牙がチラチラ。

「あ〜、無理かな〜。怒ってるっぽいから、、ごめんね〜。」

私のリードを持つ手に力が入ります。

でも、フレンドリーな子はそれでも嬉しそうに挨拶をしようと近寄ってくれて・・・

 

 

パクーッ!!!

 

ギャー!!!!またやったー!!!

ごめんね、ごめんね、ごめんね〜〜〜><。

 

「あはは、やっぱり無理か〜。いいのよ、気にしないで〜。じゃあね〜。」そうしてダメ元の挨拶は結局ダメな感じで終わるのでした。しかしなんだろう、あのフレンドリーさ…。爪の垢とかくれないかな。。煎じてむーたんに飲ましてあげたい。。

すごい強いつもりなむーたん

むーたんは身の程をわきまえるということを知らず、自分よりはるかに体の大きな子にも向かっていきます。むーたんは体も牙も小さいので、仮に本気で噛んだとしても相手に大怪我を負わせるようなことはないと思います。けれど、もし相手がむーたんの攻撃にカッとなってやり返してきたら?本気で首をガブッとされたら、むーたんは大怪我では済まないかもしれません。

そんな到底勝ち目がなさそうな相手でも、むーたんはいけると思っているのでしょう。一体全体どういう算段を立てているのか、その穴だらけの計画を聞いてみたいものです。

そうそうたる顔ぶれにケンカを売りにいく

大好きな境内に入ってくる相手に対しては、特に容赦ないむーたん。遠目から歩いている犬の姿を見つけると、ハッとして耳をぴーんと立て、じっと相手の様子を伺います。さながら獲物を狙うオオカミのような佇まいで。体重2.0kgしかないくせに。そしてわざわざその子のところまでオラオラしにいきます。相手が自分より大きくてもへっちゃら。チワワやトイプーはもちろん、柴犬やシェルティー、ボーダーコリーにまでケンカをふっかけにいきます。

私が大好きなワンコ、ボーダーコリーです♡むーたんは嫌いみたいですが私は大好きです!!!

狂犬むーたんの限界

むーたんがそんな感じなので、私は他の犬の姿を見かけると、できるだけ早めにその場を離れるようにしています。リードをグイグイ引っ張ってオラオラやっているむーたんを、「ほら、いくよ!もう、やめなさい!!」なんて言いながら引きずりながらその場を離れます。近づかなければ、誰も怪我をせずに済みますからね。

最強の二頭に出会う

ある日、いつものように近所をお散歩をしていると、むーたんがハッとして立ち止まりました。これは他の犬を見つけたパターンだ…。そう思ってむーたんの視線の先に目を向けると、少し離れたところでハスキーとバーニーズマウンテンのふたり組がゆったりとお散歩を楽しんでいました。ふたりともとても賢く、優しそうですが、どちらも大型のゴールデンレトリーバーより2まわりほど大きな体です。特にバーニーズのでかさといったら・・・!!

すっごいもふもふしてる…。めちゃ可愛い…。ちょっと、本当に、すんごい大きい…。

狂犬むーたんはというと

すっかりその二頭に見惚れてしまっていた私は、ハッとしました。もしむーたんがケンカを売りにいって、もし向こうがその気になってしまったら、むーたんはひとたまりもないでしょう。私の腰の高さよりも大きな二頭が本気になってかかってきたら、私もむーたんを守りきれる自信がありません。とても賢そうな子たちだったので、そんなことにはならないと頭ではわかっていましたが、それでも世の中に「絶対」はありません。むーたんが失礼なことをしないよう、私がしっかりしなくては…!!

そう思ってむーたんの方を振り返ると、いつもの狂犬っぷりはどこへやら。むーたんはすっかり子犬むーたんに戻っていました。100m以上距離があるのに、まんまるのおめめをもっと見開いて、全然前に進もうとしません。すっかり腰が引けてしまっています。

「大丈夫だよ。こんなに距離あるし、ね。いこう。」

優しく声をかけて促しても、むーたんは別に嗅ぎたくもない電柱を必死に嗅ぐふりをしてその場を動きません。最強のふたりがゆったりした足取りで角を曲がって見えなくなるまで、むーたんは電柱のそばから動こうとしませんでした。

 

・・・。

そうだよ。それが正しいんだよ。

あの子たちに対してはそういう感じなのに、なんでボーダーコリーとかラブラドールとかには果敢に向かっていくわけ?

境界線の引き方に大いに疑問は残りますが、すっかり縮こまってしまったむーたんが可愛くて可愛くて、私はひとりニヤニヤするのを止められませんでした。

最後に

お家に着くと、リモートワークを終えたパパがおかえりをしてくれました。私がお散歩中の出来事をパパに話していると、むーたんはすっかりいつものむーたんに戻っていました。お散歩の後のごほうびをもらおうと、パパの足元でおすわり。「さすがのむーたんも無理だったか。」と言って笑うパパからカリカリを受け取って、美味しそうに食べていました。