愛犬が命を落としかけたロキソニン事件

元気にすくすく育っているように見える愛犬むーたんですが、実は過去に何度か命を落としかけたり、大怪我をしたことがあります。私にきちんと知識があれば防げたことも多かったので、今回はそんなむーたん事件の中から、もっとも血の気が引いた事件をご紹介します。これから犬を飼う予定の方はぜひ参考にして、しっかり対策してあげてください。

むーたんロキソニン誤飲事件

ベッドに登れないはずなのに…

当時、むーたんはまだ子犬でベッドの上に自力で登れるような脚力はありませんでした。私たちがベッドにいるときは、いつもベッドの縁に手をかけ、ぴょんぴょんして乗せてアピールをしていました。そこで私はお出かけする時、むーたんに触られたくないものをベッドの上に置いていたのです。その日も頭痛薬の入ったポーチをベッドの上にポンと置いて、パパと一緒にお買い物に出かけたのですが、20時ごろに帰宅すると、なんとベッドの上に置いておいたはずのポーチと、ポーチの中に入れていたはずの頭痛薬の残骸が床に転がっているではありませんか。むーたんは体が大きくなっていて、たまに自力でベッドの上に上がれるようになっていたのでした。

後悔しても遅い

嬉しそうに駆け寄ってくるむーたんに目もくれず、私は急いで散らばった頭痛薬の残骸を調べました。銀の包みがかじられてベリベリになっていて、かじりかけの錠剤もいくつか見つかりました。むーたんが全部で何錠飲み込んだのかハッキリとはわかりませんでしたが、少なくとも4錠以上は飲み込んだようです。私たちが家を出たのが16時で、戻ってきたのが20時ごろ。何時くらいに食べたのかもはっきりとはわかりません。

いつものかかりつけの病院はもう閉まっている時間だったので、近所の夜間病院に半泣きで電話をしたところ、女医さんに電話越しでこっぴどく叱られ、「頭痛薬は早く効くように吸収よく作られている。今から胃洗浄をしてももう遅い。」と言われました。そして、「おそらくこれから急性腎不全に陥るから、症状が出たらすぐに病院へ来るように。」と言われました。電話を切った後、私はボロボロ泣きながら急性腎不全について調べました。そして、犬が頭痛薬を大量に誤飲すると命を落とすこともある、と書かれている記事を見て、頭が真っ白になってしまいました。何も知らず、嬉しそうにスリスリしてくるむーたんが、あと数時間でいなくなってしまうかもしれない…。

出かける前、パパから「あんなところにポーチ置いてていいの?」と言われていたのです。なぜあの時、ポーチを移動しておかなかったのか。頭痛薬が危険なことはわかっていたはずなのに、なぜ安全な机の上に移しておかなかったのか。私はしばらく座り込んだまま動けませんでした。

なかなか症状は現れず

パパにとってもむーたんは大切な大切な存在です。私の不注意でむーたんの命を危険に晒してしまい、私はパパからも怒られると思っていたのですが、パパは私に怒ったりしませんでした。むしろ、「あそぼう♪あそぼう♪」と誘ってくるむーたんを見て、「今のところ元気そうだし、ちょっと落ち着いて。実際むーたんが食べたのを見たわけじゃないんだから。ちょっとかじってみて、美味しくないことがわかって、もしかしたら全然食べてないかもしれないよ。」と言ってくれました。

それから深夜になっても症状が出ることはなく、むーたんも元気に跳ね回っているので、私も「パパが言う通り、むーたんは薬を飲み込んでいないのかもしれない。」と考えるようになりました。ただ、寝ている間に何かあってもすぐ対応できるよう、その日はむーたんを私たちと同じベッドで寝かせることにしました。この頃のむーたんはまだケージで寝かせていたので、一緒に寝れることが嬉しかったらしく、私たちは3人ぴったりくっついて眠りました。

明け方に響いた嘔吐の音

私は普段かなり眠りが深い方で、耳元で目覚ましがガンガン鳴っても全く目が覚めないのですが、この日はむーたんの小さな呼吸の音で飛び起きました。苦しそうにゼェゼェいいながら、体をプルプル震わせて、泡みたいな液体を吐いています。やはりむーたんは薬を飲み込んでいたのです。

時計を見ると朝の8時過ぎでした。かかりつけの動物病院が開くのは9時からなのですが、できれば救急病院ではなく、いつもの先生に診てほしくて、かかりつけの病院に電話してみました。電話に出た受付の方に事情を説明すると、8時半ごろに来てくださいと言ってもらえたので、私たちは急いで着替え、むーたんを抱えて動物病院へ向かいました。

緊急入院をすることに

先生が真剣な顔でむーたんに聴診器をあてながら、「薬は何錠くらい飲んだの?」と尋ねてきたので、私は「はっきりとはわからないんです。でも、4錠くらい飲んでいるんじゃないかと思います。」と答えました。

「4錠か…。」

ボソリと呟いた先生の表情が曇ったので、私は再び半泣き状態になりました。

「この子は体が人間の20分の1くらいしかないでしょう。その分、薬の効果も強くなります。薬の成分はすでに吸収されていて取り出せないので、あとは点滴でできるだけ薄めて様子を見るしかない。」

体重が2kgしかないむーたんが、もし本当に4錠の薬を飲んでいたら、それは40kgの人間が80錠の頭痛薬を飲むのと同じことになります。その数字に私はゾッとしました。

「今日は夕方まで緊急入院してもらいます。何もなければ夕方ごろにお電話できると思います。ただ、夕方までにもし何かあったら、そのときはすぐに連絡をします。受付のスタッフに連絡の取れる電話番号を教えておいてください。」

何かあったら…。診察室を出た私はボロボロ泣きながら、むーたんがいなくなった時のことばかり考えていました。パパと一緒にお家に帰っても、むーたんがいないお家は静か過ぎて、余計に涙が出てきます。見かねたパパが、「むーたんは強い子だから大丈夫だ!とりあえずこうして家に篭ってるのはよくない。外でごはんを食べて、病院から連絡が来るのを待とう。」と言ってくれました。

元気になって帰ってきた!

夕方ごろに動物病院から電話がかかってきて、「もう大丈夫だから迎えにきてください。」と言われました。病院に行くと元気そうなむーたんが早く家に帰りたそうにジタバタしていました。「もう大丈夫ですよ。」と言ってくれた先生の笑顔を見て、私は再びうるうるしてしまったのでした。

異物誤飲で命を落とす子もいる

実は、異物誤飲で動物病院にかかる子はたくさんいるそうです。むーたんは運よく助かりましたが、飲み込んだ薬の量がもう少し多ければ、きっとあのまま私たちの元には帰ってこれなかったでしょう。もし薬を食べた直後であったのなら、胃洗浄という方法もあるらしいのですが、毒物は一旦体の内に取り込まれてしまうと取り出す方法がないそうです。

特に1歳未満の子犬は、歯の生え変わりの時期を迎えるため、何でもかんでも口に入れようとします。むーたんは薬以外にも、壁紙や本の背表紙などを噛みちぎり、そのまま飲み込んでお腹を壊したこともありました。もし、愛犬が変なものを飲み込んでしまったときは、すぐに動物病院に連れて行きましょう。時間が経てばたつほど、治療の幅はどんどん狭まり、その分助かる確率も低くなってしまいます。

愛犬を危険物から守るために

犬が食べると危険なものを知ろう

人間用の薬以外にも、犬が食べると危険なものはたくさんあります。例えばブラックチョコレートやキシリトール(ガムなどに含まれています)は、少量でも犬が摂取してしまうと命に関わる危険な食べ物。間違っても犬が口にするような場所に置いてはいけません。

それから、子犬の頃はなんでも口にいれたがるので、タバコや画鋲などにも注意が必要です。他にも、玉ねぎやニラなどのネギ類、ぶどうなどのように、人間が食べても問題ない食べ物の中にも、犬が食べると危険な物はあります。

知らずに与えてしまうと取り返しのつかないことになるかもしれません。子犬を迎えるときは、犬にとって危険なものを必ずチェックしておきましょう。

油断は禁物!

むーたんロキソニン事件は、私の不注意から起きてしまったことです。子犬のむーたんがベッドに登りたがっているとわかっていたはずなのに、1人で登ることはできないだろうと油断して、危険な人間用の薬を置いてしまっていたことで大ごとになってしまいました。

子犬は私たちが考えている以上に早く成長します。危険物は「おそらく届かない場所」ではなく、「絶対に届かない場所」に保管しておきましょう。

最後に

30歳を過ぎた今でも、私は耳元でけたたましく鳴り響く目覚ましの音が聞こえず、気持ちよく眠り続けることができるのですが、むーたんの吐く音だけはどんなに小さな音でも聞こえます。その音がすると熟睡していても飛び起きて、プルプルする小さな背中をなでてあげながら、あの日苦しそうにしていたむーたんの姿を思い出すのです。