むーたんが子犬の頃、トイレトレーニングがなかなかうまくいかず、かなり長い間トイレの失敗が続いていました。最終的には、動物行動治療の獣医さんに頼るくらい苦戦したので、ここではその時の様子についてまとめたいと思います。
目次
子犬のトイレトレーニングは難しい
子犬を迎えた当日から始まるトイレトレーニング。これがお散歩の練習やマテの練習よりも難しく、私の中で最も難航したトレーニングでした。愛犬のむーたんはきちんとトイレできるようになるまで、なんと2年近くもかかってしまったのです。
本やネットに書いてある通りにならない
子犬を迎えたばかりの頃は、気軽に話せる犬友達もいなければ、獣医さんとの関係性もまだできておらず、困った時に相談できる人がいませんでした。そこで私は子犬の育て方が書いてある本やサイトを調べて、独自で情報収集をしていました。本やサイトによってやり方は異なるものの、大まかには以下の流れでトレーニングするように書かれていました。
- 子犬がそわそわしたらケージに入れる。
- トイレシートの上で上手にトイレができたら褒めて、ご褒美(遊ぶ・おやつ)を与える。
- 失敗した時は何事もなかったかのように振る舞い、サッと掃除する。
しかし実際は、何一つ書いてある通りにならなかったため、当時の私は何をどうしたらいいのか全くわかりませんでした。
トイレの素振りを一切見せない
トイレをしたくなったとき、そわそわしたり、色んな場所のにおいをかいだりして、わかりやすく行動で現してくれる子犬もいるそうですが、愛犬のむーたんはそういった素振りは一切見せませんでした。しかも見られたくないのか、私たちが目を離したほんの一瞬でやってのけます。どのタイミングでケージに入れればいいのかさっぱりわからず、大いに悩んだものです。
ケージに入れると鳴き叫ぶ
行動からはタイミングが読めないので、「そろそろトイレするかな?」と思った時にケージに入れてみました。しかしケージに入れるなり扉にしがみつき、ものすごく悲痛な声で鳴き叫びます。いくら無視しても鳴き声は止まらず、トイレシートに見向きもしません。「まだトイレじゃないのかも…。」と思って外に出してあげると、出した瞬間に粗相することもありました。
そして被曝する
当時、我が家ではフローリングの上に毛足の長いカーペットを敷いていました。そこが絶好のトイレスポットになってしまい、私たちが目を離しているすきに、むーたんはカーペットの上にウンチやおしっこをしていました。毛足が長いため気づかずに腰を下ろして、服におしっこが染みたり、思いっきりウンチを踏んづけたりして、げんなりしたこともありました。
トイレのしつけに失敗してイライラ
怒ってはいけないとは言われても…
本やサイトには様々なトレーニングの方法が載っていますが、多くの方法で一貫して書かれているのが「トイレを失敗しても怒ってはいけない」ということです。とはいえ、初めての子犬育てで若干ノイローゼっぽくなっていた私は(※『お家に帰ることが苦痛だった、むーたんの子犬時代』参照)、いくら練習しても上達の兆しがないむーたんにイライラしてしまい、失敗を怒ってしまうこともありました。
さらに、褒めて伸ばそうとしても全く上達しないので、やり方を変えて怒ってみたらどうだろう、と考えるようになったのです。
失敗を責めたときのリスク
その後、子犬育てノイローゼを乗り越えて子犬むーたんとすっかり仲良くなった私は、犬に関わる仕事がしたくて、ペット系メディアを運営している会社に転職します。そしてその仕事を通じて、子犬のトイレの失敗を叱るとどのようなリスクがあるのか、知ることになります。
普段、言葉を使って意思疎通している私たちは、言葉を使わないコミュニケーションに慣れていません。そのことをしっかり理解していないと、言葉を使わない子犬とのコミュニケーションに失敗する場合があります。例えば、飼い主は「トイレの失敗」を怒っているつもりでも、子犬は「排泄したせいで怒られた」と感じてしまうことも…。
「排泄したら怒られた」と認識した子犬は、怒られたくなくて、できるだけ排泄を我慢しようとします。その結果、見つからない場所で隠れるようにおしっこをしたり、証拠を無くそうとウンチを食べたりするようになるケースもあるそうです。
このリスクを知ってびっくりした私たちは、大いに反省してむーたんのトイレの失敗を叱るのはやめました。
状況はどんどん悪化します
「怒らない」を徹底
この頃になると、むーたんのトイレ成功率はだいぶ上がってました。しかし、たまに派手に失敗することもあって、被曝してしまうこともありました。仕事から帰って疲れているときにウンチをぐっしゃり踏んだときは、思わず「くっそ〜…」と唸ってしまうこともありましたが、「ここで怒ってはダメ。絶対にイライラしてはダメ。」と心の中で自分に言い聞かせて、「コラー、ダメだぞー♡」みたいなことを言っていました。
トイレの失敗の原因を推測
むーたんはトイレの場所をきちんと認識しているようでしたが、何日かに一度は必ず失敗しました。トイレの場所がわからなくて失敗するのではなく、トイレの場所を認識して失敗しているなら、わざと粗相をしていることになります。その原因がなんのか、私は探ってみることにしました。
むーたんはトイレにもお風呂にもついてくる、とっても甘えんぼな子でしたが、当時は私も会社員として働いていたため、日中は長い間、ひとりでお留守番をしなければなりませんでした。毎日毎日、私たちの帰りを待つだけの時間はどんなに寂しいでしょう。その寂しさがストレスになり、トイレをわざと失敗するようになったのではないかと私は考えるようになりました。
たくさん構っても状況は悪化します
むーたんに寂しい思いをさせていることに罪悪感があった私は、帰宅すると同時に荷物を放り投げ、むーたんを思いっきりわしゃわしゃしました。そして着替え終わると、すぐにむーたんと遊ぶ時間を作りました。お腹が減っていても疲れていても、必ずむーたんと遊んでから、ごはんを食べたりお風呂に入ったりして、少しでもむーたんが楽しい時間を過ごせるように工夫したのです。
しかし、むーたんの失敗は徐々にエスカレートしていきます。はじめは私たちの目を盗んで、見ていないところでしていたのに、そのうち私たちの目の前で粗相をするようになりました。怒らないようにしているはずなのに、失敗の頻度もどんどん上がっていきます。そして極め付けに、ベッドで横になっている私の背中の上でおしっこしたのです。これはとてもショックでした。
動物行動治療の獣医師を頼った結果
悩みに悩んだ私は、仕事を通じて知った動物行動治療の獣医さんに相談することにしました。
動物行動治療とは
動物行動治療の獣医師というのは、噛み癖や無駄吠え、攻撃などのような動物の問題行動を治療するスペシャリストです。日本ではまだ数少ない存在ですが、東京大学にも研究室があり、確かな知識と技術、そして診療経験を持った獣医師が、治療に当たってくれるのです。
その犬が問題行動をする原因を探り、必要に応じて飼い主側の対応や生活環境の見直しを指導してくれたり、場合によっては検査や投薬をすることもあります。
動物行動治療の獣医師による見解
愛犬を診断してもらった結果、とんでもないことが発覚しました。むーたんがトイレを失敗したとき、「あー!もう〜。」と声をかけることが、むーたんにとってご褒美になっているというのです。
「トイレを失敗すれば自分に注目してくれる。」「トイレを失敗するといっぱい構ってくれる。」
このように考えている可能性が高いですね、と言われました。
確かに振り返って考えてみると、私がパパとのおしゃべりに夢中になっているときに粗相することが多かったような気がします。先生に言われた通り、トイレを失敗したときの対応を改めると、それからピタッと失敗が止まり、上手にトイレできるようになりました。
以下、私たちが取った対処法です。
- トイレを上手にできたときは、たくさん褒める。無理に撫でる必要はないが、必ず注目して褒める。
- トイレを失敗したときは、普段通りに振る舞いながらサッと片付ける。無視したり怒ったりしてはダメ。何事もなかったかのように振る舞う。
※ここに記載しているのはあくまでむーたんの治療結果です。治療はケースバイケースなので、お悩みの方は専門家にご相談ください。
ちなみにむーたんはこのタイミングで一度きちんとトイレできるようになりますが、大人になった後に再度トイレトレーニングが必要になったことがあります。そのときの様子はこちらの記事にまとめているので、よかったらぜひご覧ください^^
むーたんのトイレがない?!トイレトレーニング再び行動治療の先生のご紹介
行動治療の獣医さんはまだまだ数が少なく、どこに相談すればいいのかわからない方も多いと思います。ここでは、私がお世話になった先生をご紹介しますので、もしお困りの方は以下のページより相談してみてください。
獣医師:菊池亜都子
▷ プロフィールの詳細はこちら
▷ 問い合わせしたいときはこちら
とても穏やかで優しい、動物大好きな女性の獣医さんです。東大で診察を行いながら、自宅まで来てくれる往診もされています。むーたんは往診して頂きました。
私がトイレトレーニングを通じて学んだこと
ネットを頼りすぎてはダメ
ネットで簡単に情報収拾ができるようになった今、調べれば大抵のことが解決するようになりました。愛犬を連れて泊まれるホテルやお散歩におすすめなスポット、体験談などを調べたいとき、ネットはとても便利です。しかし、何かトラブルが起きたときに素人がネットの情報だけで判断するのは危険です。確かな知識や経験がなければ、その情報が正しいのかどうか、その情報が自分にとって有益なものなのかどうかを判断することは、非常に難しいからです。
私も、「子犬がトイレを失敗したときにリアクションすると、子犬にとってご褒美になる」ということは、知っていたのです。多くの本やサイトに書いてあったので、その情報は持っていたのです。しかし、「むーたんのトイレの失敗はストレスが原因に違いない。」という思い込みから、そのことに全く気付けず、結果的にトイレの失敗を長引かせてしまいました。
困ったときは専門家へ
不安なことや困ったことがあったときは、自分でなんとかしようとしたり、ネット上の情報だけで解決しようとしたりせず、早めに専門家を頼るといいでしょう。健康に関することなら獣医さんに、トレーニングに関することはドッグトレーナーに、問題行動なら行動治療の獣医師に、相談したほうが確実です。
他の飼い主さんに意見を聞くのもいいと思いますが、飼い主さんはあくまで自分と一緒に暮らしている犬をベースにしたアドバイスしかできません。犬には個性がありますし、その子の性格や生活環境によって、原因も対処法も異なるため、本当に困っているなら専門家に頼った方が安心だと思います。
私なりの対処方法
犬はトイレの場所を覚えるとき、「場所」と「トイレシートを踏んだ時の足の感触」で覚えるのだそうです。だからむーたんはもこもこしたラグの上で粗相をしていたのかもしれませんね。さらに、毛足の長いカーペットはどこに爆弾があるかわからなくなるので、ラグを取ってコルクマットやジョイントマットに取り替えました。
最後に
本やサイトに書いてある子犬のトイレトレーニング方法を見ていると、なんとなくすぐ覚えられそうに感じるかもしれません。しかし、トイレがきちんとできるようになるまで、時間がかかる子は1年くらいかかることもあります。中にはすぐに覚えられる子もいるようですが、そんな子ばかりではありません。
「うちの子だけいつまでもできないのでは…。」「私のトレーニング方法が間違っているのでは…。」と思い悩む必要はありません。もし本当に困って悩んでいるときは、気軽に専門家を頼るといいでしょう。
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