犬のフン問題

むーたんとお散歩をしていると、毎回と言っていいほど、お散歩道に犬のフンが落ちています。落ちている場所は様々で、並木の根元や道端、ひどい場合には人通りの多いマンションの入り口や、お寺の参道のど真ん中に落ちていることもあります。

犬のフン問題は海外でも

日本は動物福祉、動物愛護の考え方が海外よりもはるかに劣っていて、ペット後進国と言われています。しかし、犬のフン問題は日本に限らず、欧米諸国でもかなり問題になっているようです。最近は犬のDNA登録を義務化して、落ちている犬のフンからDNAを採取し、飼い主を割り出すという動きまで出ているそう。

初めてそのニュースを見たときは「海外の人ってそこまでやるんだ。」と、ちょっと面白く思ったりもしたのですが、無責任な飼い主を絶対に許さないというこの社会的な意識が、飼い主の責任感を醸成し、犬に優しい環境を整えられている要因の一つになっているのかもしれないな、とも思いました。

犬のフンによる被害

通行人が踏む

心無い飼い主が犬のフンを放置することによって、様々なトラブルが引き起こされますが、やっぱり誰もが共通して嫌なのは、思いがけず落ちているフンを踏んでしまうことではないでしょうか。

むーたんが子犬の頃、私たちは毛足の長いカーペットを敷いていました。トイレの場所をなかなか覚えられなかったむーたんは、たまにカーペットの上にウンチをすることがあったのですが、カーペットの毛足が長いため、ウンチがあることを認識できず、私は過去2回くらいむーたん爆撃を食らったことがあります。

可愛い可愛い、大事なむーたんのウンチですら、踏んだときはテンションがだだ下がったものです。どこの犬かもわからない、道端に落ちているフンを踏んでしまったら・・・。きっとものすごい怒りを覚えると思います。

感染症の恐れ

私たちと同じマンションに、シェルティーの女の子と一緒に暮らしている女性がいます。むーたんをお散歩に連れて行くときによく会うので顔見知りになり、最近はお散歩がてら世間話をするようになりました。その方とこの前またバッタリ会った時、愛犬がしばらく体調を崩していたと話してくれたのです。

体調不良の原因は感染症。ひどい下痢が何日も続いて大変だったそうです。犬は道端に他の犬のフンが落ちていたらにおいを嗅ぎにいくのですが、その落ちているフンをした犬が病気にかかっていると、フンを介して病原菌がうつってしまうのです。シェルティーちゃんも、病原菌を持った犬のフンに近づいて病気がうつってしまったとのことでした。

むーたんもお散歩中、色々なもののにおいを嗅ぎにいくので、この話を聞いてから、できるだけ落ちているフンに近づけないよう注意するようになりました。

犬のネガティブイメージが広まる

落ちているフンを踏むのも、むーたんが感染症にかかるのもつらいですが、犬という生き物に対して嫌なイメージを持たれることもとても残念なことです。犬のネガティブイメージが広がれば、その分犬たちの社会進出も阻まれてしまうでしょう。

お台場のニトリは、愛犬と一緒にお買い物ができる非常に貴重なスポットですが、先日むーたんを連れて訪れたところ、入り口に犬のフンが落ちていました。しかも誰かが踏んでしまったようで、床にベッタリと張り付いていたのです。見ていて非常に不愉快ですし、こんなことが続けば、店側が犬の連れ込みを禁止してもおかしくありません。

むーたんの大好きなお散歩スポットになっている近所のお寺にも、「フンの放置がこれ以上続くようであれば、犬の散歩を禁止します。」という張り紙が貼られています。一握りの無責任な飼い主のせいで、むーたんお気に入りのスポットに一緒にお出かけできなくなってしまうのは、とても悲しいことです。

フンの始末は飼い主の責任

なぜフンを始末しないのか

たまたまお散歩バッグを忘れてきたのか、それとも最初から始末する気がないのか、どういう心境で愛犬のフンを始末しないのかは、私にはわかりません。ただ、一度だけ目撃したことがあるのは、飼い主が全く犬のことを見ていないというケースでした。

私は車に乗って信号待ちをしていました。その時、歩道を歩いていた若い夫婦が目に留まったのです。二人はキレイに着飾ったトイプーちゃんを二頭連れていて、奥さんがペット用のカートを押し、旦那さんが犬たちを散歩させていました。二人は話に夢中になっているせいか犬の方を全く見ていませんでした。そのうち、一頭のトイプーちゃんがウンチをするために立ち止まったのですが、それすら気付いていないのです。飼い主が先へ先へと進むため、その子は引きずられながら、道の真ん中でウンチをしていました。

これを見た時、私は不愉快というよりもかわいそうな気持ちになりました。犬が立ち止まった時、飼い主側にはリードが引っ張られている感覚が当然あるはずです。それなのに愛犬が立ち止まった原因を確認することすらしない…。日常的に愛犬を引きずりながら歩いているのでしょう。

愛犬の見た目をキレイにする楽しみは知っていても、愛犬の気持ちに寄り添う楽しみは知らないのかな、と思いました。犬のことをぬいぐるみのように扱うあの姿勢は、見ていて心が痛みました。

きちんと後始末をしている飼い主にも迷惑

むーたんとお出かけをする時、私は当然お散歩バッグを持って出かけ、むーたんがウンチをすれば必ず始末しますし、おしっこをすれば水で流すようにしています。しかし、他人からすると私が後始末をきちんとする飼い主かどうかは見分けがつきません。

ある日、むーたんとお散歩をしていた時のこと。いつも素通りしていた近くの駐車場にむーたんが入りたそうにしていたので、車の出入りがないことを確認し、私は駐車場内を少し散策することにしました。

むーたんが柱の匂いをかいでいるとき、突然車から男の人が出てきて、こちらに近づいてきました。そして、「いつもこの駐車場に犬のフンを放置するのはあなたですか?」というのです。突然のことだったので私は少し驚きましたが、「いえ、違います。私ではないですよ。」と伝え、駐車場を出ようとしました。しかし男性は食い下がってきます。「本当にあなたではないんですか?」

あらぬ疑いをかけられて、私は少しイラッとしました。

「このようにきちんとお散歩バッグも持っていますし、私ではありません。」

そう答えて駐車場を出ようとしましたが、さらに男性は追いかけてきました。どうやら犯人を特定するために車の中で張り込んでいたようなのです。この時はとても気分が悪かったのですが、家に帰ってから冷静になると、あの男性も被害者なのだと思うようになり、怒りとはまた違う、なんとも言えない嫌な気持ちになりました。

フン問題の課題

犬のフンを平気で捨て置く飼い主は、責任感が欠落しているのだと思います。欧米諸国のように、フンをきちんと始末しない人間を特定して罰則を与えるのも一つの手段ですが、日本ではそれよりもまず、無責任な飼い主がホイホイ犬を入手できてしまう今の環境を変えるべきなのではないでしょうか。

フンの後始末だけが飼い主の責任ではありません。愛犬と心から向き合うこと、その子の体力に見合うお散歩にきちんと連れて行ってあげること、息をひきとる最期の時まで惜しみない愛情を注ぐこと、それらすべてが飼い主としての責任です。責任感のない人間に犬を渡さないことが、不幸な犬たちを減らし、ひいては犬のフン問題を改善してくれることに繋がると思うのです。