むーたんパパはとっても食いしん坊なので、パパのワークスペースには特大のおやつ箱が設置されています。パパはおやつが大好きで、たまに食料品の買い出しについてくると、毎回置く場所がないくらい大量のお菓子を買おうとするので、「この箱に入りきるまでの量なら買っていいよ。」ということにして、専用のおやつ箱を作ってあげたのでした。中にはポテチやおせんべい、チョコレートが山ほど入っています。
ある日、むーたんがパパのお膝で眠っていると、パパがゴソゴソおやつ箱をあさり始めました。もうすぐお昼ごはんなのに待ちきれなかったのでしょう。パパは箱の中から一つのフィナンシェを取り出して、むしゃむしゃ食べ始めました。
あまーいバターの匂いと、香ばしいアーモンドの匂いがあたりいっぱいに漂います。むーたんはフィナンシェを食べたことはありませんが、前に深夜にたらふく食べたクッキーの匂いによく似ていました。(※『夢のような夜を過ごしたむーたん』参照)
くんくん。
いい匂いがします。
くんくん。
必死に身を乗り出して、もう一回かいでみます。
「ぜったいおいしいやつだ!!!」
むーたんはすっかりフィナンシェに夢中になってしまいました。
これだけ大きいんだから、むーたんにもちょっとはくれるはず!
なにせこのフィナンシェ、むーたんのお顔よりも大きいのです。
パパのおひざの上でいい子でおすわりしていると・・・
こっちにきました!!
「ちょーだい、ちょーだい、ちょーだいっ♡♡♡」
あっ・・・!
フィナンシェはむーたんの前を通り過ぎ、パパのお口の中へと消えていきました。
パパのお口からは甘くていい匂いがします。
むーたんは必死にパパのお口を見つめますが、フィナンシェが戻ってくることはありません。
こんどこそ!!
必死に身を乗り出しますが、パパの手の中のフィナンシェはどんどん小さくなっていきます。
まさかこのままむーたんにはくれないつもりなのでしょうか?
パパは全部一人で食べてしまうつもりなのでしょうか??
むーたんの熱意に屈したパパは、キッチンにいる私に向かってこう尋ねました。
「おーい、むーたんにフィナンシェってあげたらダメかなぁ?ちょっとくらいならいい??」
「ダメよ、むーたん最近ちょっと食べ過ぎだから。」
「ちぇっ。むーたん、ダメだって。ごめんな。意地悪おばさんがダメだって。」
ぱくっ。
いたたまれなくなったパパは残りのフィナンシェを一口で平らげました。
なんということでしょう。
あんなに大きかったフィナンシェは、すっかり跡形もなく消えてしまいました。
こんなにいい子で待っていたのに、結局むーたんは一口ももらえませんでした。
「ごめんな、おばさんがダメって言ったから。ごめんな、むーたん。」
パパは全力で私に責任をなすりつけます。
全く、しょうがないな。
「むーたん、おいで。」
むーたんにもちゃんとおやつ、あげますよ。
人間用のフィナンシェは甘くてあげられないけど、せっかくいい子で待ってたんだもんね。
ぱくっ!
フィナンシェはパパが独り占めしたけれど、むーたんのおやつはむーたんが独り占めしていいんだよ^^
こうして満足したむーたんは再びパパのお膝の上に乗せてもらって、お昼ごはんの時間になるまでいい子で待っていたのでした。