動物愛護法がついに改正!2019年の改正点をわかりやすく

日本のペットを取り巻く環境は、まだまだ多くの課題が山積みですが、先日の動物愛護法の改正で少し改善されたのではないかと思います。ここでは、今回改正された動物愛護法によってどのような変化がもたらされるのか、わかりやすく解説したいと思います。

子犬時代のハードな経験

私たちが愛犬むーたんと出会ったのは、六本木にある小さなペットショップでした。その頃の私たちはペット業界のことについて何も知らず、深く考えることなくむーたんをお迎えしました。

しかし今考えると、そこは決して動物に優しいペットショップではありませんでした。店内には所狭しとケージが並べられ、狭い通路を多くの人が行き交います。並べられたケージもまた狭く、トイレもなければ給水ボトルもありませんでした。床の上にはトイレットペーパーがちぎって置かれているだけ。むーたんと一緒に暮らす時間が長くなればなるほど、私はそのお店に入れなくなってしまいました。

ペット業界の課題点

悪質なパピーミルや引き取り屋の台頭

私はむーたんを迎えるまで、子犬たちは優しいブリーダー(繁殖業者のこと)のもとで生まれて育ち、そのあとペットショップで販売されているのだとばかり思っていました。しかし、現実は厳しいものです。

世の中には悪質なブリーダーやパピーミルも数多く存在します。パピーミルというのは、子犬工場という意味。犬や猫を商品としてしか考えず、悪質な手口で大量繁殖させる業者のことを指します。ボロボロになるまで交配に使われる母犬や、狭いケージに所狭しと突っ込まれる子犬の存在、ペットショップへ出回るまでの流通過程で多くの子犬が命を落とすことを知って、私は愕然としました。

さらに、平成24年に行われた動物愛護法の改正によって、ペットショップなどの業者が直接行政に殺処分を依頼できなくなると、「引き取り屋」と呼ばれる業者が台頭するようになります。引き取り屋のことについては、あまりにも酷いのでここでは書きませんが、興味のある方は『引き取り屋の存在と、私が衝撃を受けた一枚の写真』を読んでみてください。

幼い子犬がペットショップに並ぶまで

私たちのおうちにむーたんがやってきたのは、まだ生後2ヶ月くらいの頃でした。ペットショップの店員さんの話によると、むーたんはそのペットショップに約1ヶ月置かれていたそうです。つまり、むーたんは生後1ヶ月ちょっとで母犬と兄弟犬から引き離されたことになります。

しかもそのペットショップは、ブリーダーとの直接取引をうたっていなかったので、おそらくペットオークション経由で子犬や子猫を仕入れているのでしょう。(※ペットオークションについては『ペットオークションって知ってる? 〜子犬が店頭に並ぶまで〜』に詳しく書いてあります。)

我が家のむーたんも、生後1ヶ月ちょっとでお母さんと兄弟から引き離され、ダンボールに詰められ、ベルトコンベアーを流されて、ペットショップのショーケースに1ヶ月もの間ひとりで閉じ込められていたことになります。

誰でもすぐに子犬が手に入る

街のいたるところにペットショップがあり、ふらりと立ち寄るだけで、どんな人でも手軽に犬を入手することができます。飼育能力が低い飼い主でも、すぐに犬を飼い始めることができるのです。

そのため、無責任な飼い主が一時的な感情に任せて子犬を迎え、飼育放棄する例も少なくありません。飼育放棄をする飼い主の中には、飼い始めた子犬が気に入らないから、他の子犬ととりかえようとする人もいるそうです。犬を飼っては捨て、飼っては捨てを何度も何度も繰り返すのです。(※『この世から最低な飼い主は絶対にいなくならない』参照)

動物愛護法の欠陥

悪質な繁殖業者を野放し

ペットショップやブリーダーのように、営利目的で動物を扱う業者は、行政への登録が必要です。法律上、悪質な業者は登録の取り消しや業務停止命令が出されます。しかし、実際は一般的な感覚から非常に悪質だと思われる業者でも、業務停止命令が出されることは滅多にありません。

それは日本の動物愛護法に数値規制がないためです。ペット先進国と言われるヨーロッパなどでは、一頭あたりのケージのサイズ、飼育係一人あたり飼育できる動物の数、繁殖の上限回数などの数値が法律で明確に示されています。しかし日本の法律にはそれがありません。そのため、業者が狭いケージにぎゅうぎゅうに犬を詰め込んだとしても、ボロボロになるまで繁殖させたとしても、日本の法律で裁くことはできないのです。結果的に、悪質な繁殖業者や引き取り屋はほぼ野放し状態となっています。

8週齢問題

子犬は生まれてから、母犬や兄弟犬と一緒に過ごすことで様々なことを学びます。特に生後3週齢〜12週齢の社会化期と呼ばれる期間は非常に重要で、兄弟犬とじゃれることによって他の犬とのコミュニケーションを学んだり、母犬からおっぱいをもらうことで噛む力加減を学んだりします。

そのため、あまりに早く親元から引き離してしまうと、他の犬とうまくコミュニケーションが取れなかったり、力加減がわからない子になってしまうのです。また重要な社会化期をショーケースで一人で過ごすことによって、十分な人慣れ・犬慣れができず、大きくなっても他の犬や飼い主以外の人間を怖がるようになってしまいます。

ペット先進国と言われる海外の国では、生後8週齢以上経過している子犬しか販売できないことが法律で決まっています。しかし日本では、生後7週くらいの子犬が多く売りに出されています。日本でも動物愛護団体が中心となって8週齢規制を徹底するよう強く求める一方、子犬らしさがなくなることで犬が売りにくくなると考えるペット業界が大反発し、ズルズルと先送りにされてきた問題でした。

虐待の取り締まりが緩すぎる

今までの動物愛護法では、動物虐待の懲役刑は器物損壊よりも軽かったのです。そのため、動物の虐待があとを絶たず、中には虐待する動画をネットで公開する人たちも出てきました。まだ記憶に新しい、元税理士の大矢誠による猫の虐殺死および、虐殺動画の公開は、そのあまりの残虐性からメディアでも大きく取り上げられ、多くの厳罰を求める声が集まりました。しかし結局下された判決は執行猶予付きで、実刑判決にはなりませんでした。

ついに改正!2019年動物愛護法のポイント

マイクロチップが必須に

(※ 画像はイメージです。)

今回の法律改正で、マイクロチップの埋め込みが必須になりました。15桁の番号を記録した小さなチップを、注射器のような専用器具で犬猫の首付近に埋め込みます。これを専用のリーダーで読み取ると、飼い主を特定することができることから、災害時に迷子になった犬猫を探したり、無責任な飼い主による飼育放棄を防ぐ効果が期待されています。

ただし、マイクロチップを読み取る精度は決して高いと言えません。今後どのように運用をしていくのか、注目したいところです。

動物虐待の厳罰化

今までの動物愛護法では、動物を虐待すると「2年以下の懲役または200万円以下の罰金」の罪に問われましたが、これは器物損壊罪の「3年以下の懲役または罰金30万円以下」と比べると懲役刑が軽く、動物愛護団体を中心に厳罰化を求める声が多く集まりました。また、最近は動物を虐待している動画をネットで公開するケースも相次いでいたことから、今回の改正では「5年以下の懲役または500万円以下の罰金」に改正されました。

生体販売は8週齢から

長い間ズルズルと先送りにされていた8週齢規制がついに実現しました!(※ただし一部の日本犬は、ブリーダーから直接飼い主に販売するときに限り、7週齢でも販売できます。)

我が家の愛犬むーたんは、幼いときにたくさん怖い思いをしたせいか、私たち以外の人間も他の犬も苦手な子になってしまいましたが、これからはそんな犬が少しずつ減っていくといいですね。

最後に

ペットを取り巻く環境は少しずつではありますが、改善されています。特に今回の改正については、社会的な関心が高まったことも見直しの要因のひとつになっています。動物たちを取り巻く環境について、もっと多くの人に理解を広めることが大切なのだと、改めて実感しました。私も微力ながら、動物たちの住む世界のことを発信していけたらと思います。