鰻が絶滅危惧種って本当?養殖を食べれば大丈夫??

夏といえば鰻の季節。最近はスーパーや牛丼屋、ファミレスなどでも夏になると鰻を提供するお店が増えてきました。そんなウナギですが、実は絶滅危惧種に指定されているということをみなさんはご存知ですか?私は初めて聞いたとき、大きな衝撃を受けました。そこで今回は、どのような経緯でウナギが絶滅危惧種に指定されたのか、ご紹介したいと思います。

ウナギはなぜ絶滅危惧種になったの?

養殖ウナギを食べればいい、というわけではない

最近、ウナギが獲れなくなってきているというニュースをよく耳にします。それと同時に、「天然のウナギが取れなくなってきたんだったら、養殖のウナギを食べればいいじゃん。」という声もよく聞くようになりました。確かに私も養殖のウナギは人間の手によって卵から孵り、生まれてきた稚魚を育てているものだとばかり思っていたのです。しかし実際の養殖ウナギというのは、捕獲した稚魚を大人になるまで育てているだけなのです。

養殖のウナギは繁殖することができません。大人のウナギが獲れないからといって子どもウナギの乱獲を続けていると産卵数はどんどん減っていき、絶滅は避けられないものになるでしょう。養殖ウナギを食べれば絶滅を回避できるという認識は大きな間違いなのです。

ウナギの生態系は未だに解明されていない

「だったら交配させて卵から育てたらいいじゃないか。」と考える方もいるでしょう。私も最初はそう思いました。しかし調べてみると、ウナギの生態系については未だに多くが解明されていないようなのです。長い間不明とされていたウナギの産卵場所が近年になってやっと特定されたものの、稚魚が何を食べて大きくなっているのか、どうやって大人になっていくのか、親ウナギがどのような周期で産卵場所に戻るのか、そういった基本的なことすら詳しくは解明されていないのです。だから稚魚を捕獲して大きくせざるを得ないのです。

乱獲を止めることはできないの?

食べたい時に気軽に食べられる環境

ウナギの数がどんどん減っていく一方で、大量に廃棄が出ているということも知っておかなくてはなりません。毎年多くのお店が土用の丑の日に合わせて鰻を店頭に並べるものの、結局さばききれずに大量の廃棄を出してしまうことも少なくないのです。国際環境NGOグリーンピース・ジャパンによると、2017年に大手スーパー5社が廃棄した鰻は約2.7トンにも登るそう。

スーパー以外にもコンビニや牛丼屋、ファミリーレストランなどの多くのお店で、お手軽価格で気軽に鰻を食べられるようになりました。誰でも気軽に、食べたいと思った時にすぐ食べられる環境を作るためには、大量のウナギを仕入れる必要があります。この便利な環境を見直さない限り、乱獲が止まることはないでしょう。

密漁と不透明な流通

高騰を続けている鰻は当然その稚魚も高く売れるため、密漁も盛んになります。国内で組織的な密漁が行われていたり、あまり鰻を食べる文化のない中国や台湾などの日本周辺の国々が、利益目的のために大量に稚魚を捕獲し、日本に販売するという違法行為も多いようです。

この構造、ペット業界の闇に近しいものを感じました。お金になる子犬を大量に出産させ、売れ残ったら処分するペット業界の構造と、絶滅しかけているウナギを乱獲し、食べずに廃棄する鰻業界の構造。命を命とも思わない経済構造を支えているのは、他ならぬ私たち消費者なのです。

ウナギを絶滅から守るためにできること

まずは絶滅危惧種であることを知る

これほど身近な存在であるウナギが絶滅危惧種であることを知らない人はまだまだ多いと思います。毎日通うスーパーの魚コーナーに山積みされている鰻を目にしていると、まさか絶滅危惧種だとは思わないですもんね。

私はウナギが絶滅危惧種だと知ってから、自分から進んで鰻を食べるのをやめました。もともと鰻よりアナゴの方が好きなので、「夏だし鰻でも食べるか!」みたいな理由がなければ、鰻を食べようとは思わなかったのです。もちろん、コース料理やお寿司などで鰻が出てきたときは有り難くいただきますが、これだけ美味しいものが溢れる時代に、何もわざわざ好物でもない絶滅危惧種を食べるのはいかがものかと思ったのです。

食べるならうなぎ屋さんで食べて

もちろん、「絶滅危惧種を食べてはいけない」という価値観を強要するつもりはありません。私は単純に食べなくてもいいと思うので食べないのであって、鰻を食べたいと思う人を否定したいとは思いません。ただ、できることならきちんとしたうなぎ屋さんで食べて欲しいなと思います。スーパーに山積みにされている鰻を買い続けているといつまでも廃棄は減りませんし、コンビニや牛丼屋などで安売りされている鰻は密漁で売りさばかれている違法ウナギである可能性が高く、それらを食べることは違法行為を助長させることになります。

こうした産業を支える消費者が減っていけば、無茶な仕入れをする小売店も減っていき、それに伴って密漁も徐々に減っていくはずです。限りある命をいただくわけですから、きちんとしたうなぎ屋さんに足を運んで、本当に美味しい鰻に舌鼓を打ってほしいです。

最後に

ウナギが絶滅危惧種だと知った時、私はものすごく大きな衝撃を受けました。世の中にはたくさんの絶滅危惧種がいますが、なぜかウナギに関してはすごく引っかかっていたので今回記事にすることにしました。記事にしていく中で気付いたのは、ウナギ業界の闇がペット業界の闇と酷似していたことです。知識がなかったせいで、業界の闇を消費者として支えていた自分が嫌だったのだと気付きました。ペット業界もウナギ業界も、正しい状況を理解する人が増えることで、無駄にされる命を減らせたらいいなと思います。