むーたんが極度の人見知りになった理由を考えてみる

むーたんはとてもいい子なので、一緒に暮らしていて困るようなことはないのですが、ものすごく人見知りなところは少し残念に思う時もあります。人見知りするのは性格なので仕方のないことですが、せっかく優しくしてくれる人がいるのに、堅く心を閉ざしてしまうのは、もったいないように思うのです。日本ではむーたんのように人見知りの犬が多いと言います。それは一体なぜなのでしょうか?

むーたんの人見知り

我が家に慣れるのに1ヶ月かかった

お家に帰ることが苦痛だった、むーたんの子犬時代」でもご紹介しましたが、私たちがむーたんを迎えてから、むーたんが我が家に慣れてくれるまで、実に1ヶ月近くかかりました。早い子だとお迎えした翌日から、遅い子でも2週間くらいでお家に慣れてくれるそうですが、むーたんは2週間経っても3週間経っても心を開いてくれませんでした。「私たちのところに来るのは嫌だったのかもしれないな…。」と思ってしまうほど、私たちはむーたんとの心の距離を感じていたのです。

私とパパ以外は一切受け付けない

やっと心を開いてくれたむーたんは、甘えん坊で優しくて、私たちにとってかけがえのない存在になりました。私たちはむーたんのことが可愛くて可愛くて、色んな人にむーたんの話をするようになりました。そして、犬好きな親戚や友人たちが、むーたんに会いに来てくれるようになったのです。

訪れてくれた人はみんなむーたんのことを可愛がってくれました。むーたんが怖がらないように、優しく声をかけてくれるのですが、むーたんは私たちの足元から出てきません。おやつをくれる優しい人だと覚えてもらおうとして、おやつをあげてもらっても、むーたんは恐る恐る近付くとサッとおやつを取り、そそくさと私たちの足元に戻ってきます。結局、今までむーたんは私たち以外の誰にも心を開くことなく、3歳になってしまいました。

ちょっと笑える気まずいエピソード

初めてのお義母さん

むーたんの人見知りな性格は私たちもすぐに理解したので、むーたんがなかなか心を開いてくれないことは来訪者にあらかじめ伝えておくのですが、初めてお義母さんにむーたんを会わせた時は少し緊張しました。

お義母さんはとても優しい人で、むーたんが懐かないことでどうにかなるとは全く思っていなかったのですが、それでも「まぁ可愛らしい。」と言ってくれるお義母さんの膝の上で、目を見開いてこちらをガン見しながらプルプルしているむーたんを見た時は、心の中で「おい、少しくらいがんばれ。」と思っていました(笑)。

ツンデレ

むーたんはなぜか、相手が自分に気付いていないと積極的に近づいていく習性があります。お散歩中に出会う、信号待ちをしている人やバスを待っている人の足元に、自分からスリスリ近寄っていくのです。放っておくと相手の靴にお鼻がくっつくくらい近付こうとするのですが、相手が気付いて「わぁ、可愛い!」とかがもうとすると、矢のような速さで逃げ出してしまうのです。そして私は「あ…ごめんね。。」と苦笑いをする相手に苦笑いで返し、「どうもすみません。」と言って、逃げるむーたんの後を追いかけるのです。

怖すぎておもらし

むーたんに会いに来てくれている友人のうちの1人がお家に遊びに来てくれた時のこと。「むーたん、こんにちは。」と優しく声をかけてくれているのに逃げ回る様子を見かねた私は、「ほら、むーたん。前も来てくれたお友達なんだから大丈夫でしょ。」と言いながらむーたんを抱き上げ、お友達の腕に移そうとしました。

するとむーたんが嫌がって大暴れしはじめたので、私たちはむーたんを落とさないように急いでしゃがみ、放してあげました。やれやれ、と息をついたのも束の間、なぜか友達の服が濡れているのです。そう、まさかの抱っこ中に、むーたんは粗相をしてしまったのでした。クリーニング代を出そうとしても、「大丈夫、大丈夫。怖かったんだよねぇ?ごめんね。」と優しく声をかけてくれる友達に、申し訳ない気持ちでいっぱいになりました。

日本には人見知り・怖がりな犬が多い

心の成長に大切な「社会化期」

子犬の成長はとても早く、最初の1年で人間でいう12〜15歳くらいまで成長するため、最初の1年間の過ごし方は非常に大切です。そして、その子の性格を形成していく上で特に大切なのが、社会化期と呼ばれる3〜12週齢の時期。この時期に様々なものに触れることで、子犬は周囲の人や他の動物を受け入れることができるようになり、生涯に渡る適応力を身に付けることができます。この社会化期をきちんと過ごすことができないと、飼い主さん以外の人間を怖がったり、他の犬とコミュニケーションが取れなかったりと、社会に適合できなくなってしまうのです。

日本のペットショップにいる子犬は幼すぎる

日本のペットショップには、8週齢未満の子がゴロゴロいます。社会化期で一番大切な時間を、親や兄弟から引き離されて1人ガラスケースで過ごすことになるのです。また、ペットショップに来る前にも、ダンボールに詰められ、競りにかけられ、人間の子供では考えられないような扱いを受けているのです。(詳しくは「ペットオークションって知ってる? 〜子犬が店頭に並ぶまで〜」でご紹介しているので、もしよかったら読んでみてください。)日本の子犬たちは、心の成長を妨げられる環境に置かれているのです。

飼い主さんに知ってほしい「8週齢問題」

社会化期を母犬や兄弟犬とともに過ごした子犬は精神的に安定し、しつけのしやすい子になると言われています。反対に、あまりにも早く母犬から引き離してしまった子犬は、将来的に飼い主に対して攻撃をするようになったり、他の犬を極端に恐れたりと、様々な問題行動を起こすこともわかっています。そのため、動物福祉の進んだ欧米諸国では、8週齢未満の子犬を売り物にしてはいけないことが法律で決まっているのです。

しかし、日本では「あまり大きくなると子犬のコロコロした可愛さが薄れるから」「子犬が売れなくなるから」などの理由で、ペット業界側の猛反発を受け、現時点では8週齢規制がかかっていません。そのため適切な社会化期を過ごせない子犬が多く、極度な人見知りになってしまう子が多いと言われています。2018年の動物愛護法改正のタイミングで、8週齢規制をかけられるかどうかが争点となっています。

動物愛護法の改正により、一部の犬を除いて8週齢規制がかけられることが決定しました!詳しくは『動物愛護法がついに改正!2019年の改正点をわかりやすく』で解説しています。

むーたんの子犬時代

悪質なブリーダーのもとに生まれた可能性

これらの情報を私が知ったのは、むーたんと一緒に暮らすようになってからのこと。そのため、むーたんと出会った時は何も考えずにペットショップへ足を運び、深いことは考えずに、ショーケースに飾られていたむーたんを迎え入れてしまいました。

むーたんをお迎えした後になって、むーたんパパと「むーたんをお母さん犬に引きあわせてあげたいね。」ということになり、色々調べてみた結果、おそらくむーたんはオークションを経由している可能性が高いこと、早期に母犬と引き離されてしまっていること、大事な社会化期に1ヶ月以上もひとりぼっちでショーケースに飾られていたことなどがわかりました。

一方で、もともと調べたかったブリーダーの情報は何も出てこず、もしかしたら幼少期にひどい環境で過ごしていたのかもしれないと思うと、とても胸が痛くなりました。むーたんが極度の人見知りなことも、他の犬たちと仲良くできないことも、全てはその幼少期の経験に基づくものだとしたら、本当に悲しいことです。

世の中には優しい人も楽しいこともたくさんある

むーたんは私たちの家に慣れるまでにたくさんの時間が必要でした。でも、心を開いてくれた時から、楽しくて幸せな時間が始まったのです。美味しいごはんを食べて、日向ぼっこをして、お膝の上でお昼寝をして、おもちゃを追いかけ回し、お散歩に出かけ、夜は私とパパの間で丸まって眠ります。今のままで十分かもしれないけれど、無理のない範囲で、まだまだ世の中には優しい人も楽しいこともたくさんあることを教えてあげたいです。

むーたんを可愛がってくれる人はたくさんいること、心を許せるお友達ができたらきっと楽しいこと、好きだと思える場所はまだまだいっぱいあること。そうやってむーたんが心を開いていけるように、これからも私は少しずつ練習するのだと思います。

最後に

幸いなことに、むーたんに会いたいと言ってくれる友達はたくさんいて、中には足しげくお家に通ってくれる人もいます。そのうちの1人に対して、「このひとはだいじょうぶ」と心を開きかけているのです。むーたんは時間がかかってもきっとがんばれる子だと思うので、これからもむーたんの成長をパパと一緒にあたたかく見守ってあげられたらと思います。