動物愛護につきまとうネガティブイメージ

私は今、動物のための寄付サイトを運営している動物関係の団体に所属し、そちらのサイトにコラム記事を寄稿させてもらっています。私がそういう活動を始めることを周囲の人々に話したとき、もれなくいい反応は返ってきませんでした。その理由は私もわかっていたので、「やっぱりね。」と思ったのです。

毎年多くの犬猫を救う動物愛護団体

世界の先進国と比べると、日本の動物を取り巻く環境は劣悪で、ペット後進国と呼ばれても仕方のない現状があります。ちょっとした講習を受けるだけで、誰でも簡単にブリーダーになることができるので、日本では毎年、人間の手によって大量の子犬や子猫が生まれます。そして穴だらけの動物愛護法に売れ残った子達を守る力はなく、多くの犬猫が殺処分されているのです。

そんな悲惨な現場に自ら赴き、たくさんの命を救っているのが動物団体の方たちです。なんの報酬もないのに、ただ善意だけで行動に移せるのは、本当にすごいことだと思います。朝日新聞の調査によると、2017年に殺処分数が減少した背景には、動物愛護団体の必死な活動があるそうです。

とはいえネガティブなイメージも…

不透明な動物愛護団体も多い

一方で、世の中の人々が動物愛護団体に対して、ネガティブなイメージを持っているのも事実です。私が動物愛護系の団体に所属することを伝えた時、周りの人はこんなことを言っていました。

  • 「ふぅん。まぁ好きにすればいいけど、あんまりのめり込まないようにね。」
  • 「へぇ。。ついにそこまでいったんだ…。」
  • 「え、なに?宗教でもはじめたの?」

確かに、みんなの言わんとすることはわかります。動物愛護団体の持つ過激さは私もずっと苦手でしたし、グレーな団体も数多く存在しているという話を色々なところから聞いていたからです。

動物愛護団体と名乗っている引き取り屋がいるという話も聞いたことがあります。動物愛護団体同士で潰し合意をしているニュースを目にしたこともあります。かわいそうだからと捨て猫を拾いまくって、一人暮らしの狭い部屋に何十頭もの猫を閉じ込め、多頭崩壊させた女の人の話も聞いたことがあります。信頼していた愛護団体の代表が警察に逮捕された、なんて話もありました。

過激すぎるセミナー

それでも、動物たちの幸せを願うだけではなく、なにかしら行動に移したいと思った私は、身元のしっかりしている動物愛護団体が主催しているセミナーに、むーたんパパと一緒に参加することにしました。保健所に足を運ぶ勇気なんてありません。TNR(ノラ猫の去勢活動)に参加するほどの精力もありません。ただただ愛犬のむーたんが可愛いという気持ちから、犬猫を取り巻く環境に興味を持っただけの私たちにも、何かできることはないのか、そのヒントを得たいと思ったのです。

しかし、私たちはそのセミナーに最後まで参加することはできませんでした。保護犬を迎えた芸能人によるオープニングトークこそ穏やかでしたが、続く動物愛護団体の人たちのトークは耳を覆いたくなるような過激な話ばかり。(あまりに過激なのでここでは割愛します。)

世の中にどれほど悲惨な犬猫がいるか、自分たちがどんな過酷な環境から犬猫を救っているか、自分たちの活動がどんなに苦しいものか…。そんな話が延々と続き、私たちのなかに芽生えた保護活動への興味は一瞬で摘み取られてしまったのです。

中には穏やかな団体も

過激な団体やグレーな団体の存在もあり、動物愛護団体のイメージは世間的に決していいとは言えません。しかし、純粋にペットの取り巻く環境をいいものにしたいと願う団体も数多くあります。殺処分を減らす仕組みを、ビジネスに組み込もうとしている動物想いな会社もあります。そんな健全な団体の中から、「もっとみんなが気軽に保護活動に参加できたら」という思いを持つ団体と私は出会うことができたので、今はそちらに所属しながら、ペット関連の記事を寄稿するという形で活動に参加させてもらっています。

ネット上での攻撃や批判

動物愛護団体の持つ過激さ

私は動物愛護団体の人が持つ過激さが苦手です。でも、ある程度の過激さがなければ世の中は変えられないとも思うし、それで多くの犬猫が救われているのも事実。彼らの活動を微力ながらも応援したいという気持ちは当然あります。なので毎月少しですが、動物愛護団体に一定額を寄付するようにしています。

ネット特有の攻撃性

過激な動物愛護団体と同じくらい激しい投稿を、SNSやネット上でチラホラ見かけます。しかし、ネット上で特定の飼い主を非難したり、攻撃したりする人たちは、動物愛護の精神を根本から理解できていないように思います。

以前SNS上に、暑い夏の日に犬を連れて歩いている飼い主のことを、「虐待だ。」「ゆるせない。」「お前が熱中症で倒れろ。」などと攻撃している投稿がありました。その飼い主がどういう人なのか、なぜ暑い時間帯に犬を連れて歩いていたのか、そんなことは何も書かれていません。ただ、暑い日に犬を散歩させていた事実と、それに対する攻撃だけがいくつも投稿されていました。

もし、本当にその飼い主の行動を変えたいなら、理由を明確にすべきです。その飼い主は愛犬のことを全く大切に思っていないのでしょうか?本当に虐待するつもりで、わざとそんな時間帯に連れて歩いているのでしょうか?もしかしたら午後からしばらく家を開ける用事があり、トイレを済ませておきたかったのかもしれませんし、単純に熱中症の正しい知識がなかっただけかもしれません。

ちなみに、私も去年の夏、近所の動物病院にむーたんを定期検診に連れて行くとき、お散歩しながら連れていったことがあります。ずっと日陰になっている道を3分ほど歩けば着くので、先にアスファルトを触って熱くなっていないことを確かめてから、一緒に歩いて行きました。これはSNS上で叩かれていた飼い主と同じ行動になると思いますが、果たして虐待と言えるのでしょうか?

攻撃することが目的になっている

ネットやSNS上の攻撃で犬を救うことはできません。そういう投稿は犬を救うことが目的ではなく、人を攻撃することが目的になっています。そうして自分の正義感を満たして、満足しているだけにしか見えません。

以前、むーたんのInstagramに、外国人からこんなコメントが寄せられました。

あなたがもし中国人なら、いますぐ犬を食べるのをやめなさい。(英語)

むーたんと一緒にうつっている私の写真を見て、東洋人だと判断した彼女は、単にそれだけの理由で攻撃的なコメントを送ってきました。でもちょっと調べれば、私が犬を食べるような人間ではないとわかるはずです。Instagramには、むーたんと一緒にいろんなところに行き、むーたんと過ごす時間を大切にしている私たちの写真がたくさんあるからです。

お門違いな発言で、ただ他人を不愉快にしただけですが、きっと投稿した本人は「ビシッと言ってやった!」と思っているでしょう。そして自分の行動に満足し、正義感に浸っていることでしょう。

これは極端な例かもしれませんが、似たようなことはネットのあちこちで起こっています。一般常識から少しでも外れている飼い主を見つけるとすぐに虐待呼ばわりして、激しく非難している人たちを何度か見かけたことがありますが、攻撃している本人は、本当に完璧な飼い主なのでしょうか?一切の隙もない、完璧な人間なのでしょうか?

他人を攻撃するパワーがあるなら、もっと建設的な方向に動くべきです。たとえ正義感からくる行動だったとしても、攻撃的な姿勢では何も変えられないばかりか、動物愛護の精神や保護団体にネガティブなイメージを植え付ける可能性すらあるからです。

動物愛護の精神と向き合う

自分にできることから始める

私の周りで犬と暮らしている人たちの中には、愛犬から影響を受けて、動物たちの暮らす環境をより良いものにできないか、模索している人もたくさんいます。「もっとこういう世界になればいいのに。そのためにこんなことをしたらいいのに。」そういう具体的なアイデアを持っている人もいます。しかし、動物愛護の精神にまとわりつくネガティブイメージから、実際には行動に移せていない人がほとんどです。

もし、保護活動に興味を持っているのなら、まずはしっかり情報を集めましょう。ペット業界がどうなっているのか、動物愛護団体にはどういう団体があるのか、保護活動にはどんな種類があるのかなど、しっかり情報を集めれば、今の自分の生活を維持しながらも、無理のない範囲でできることがあると気づくはずです。

動物愛護のイメージを変えよう

動物を大切にするという精神は、本来褒められるべきもののはず。身を削るようにして多くの犬猫を救っている保護団体の方たちも、本来であれば表彰されるべき対象のはずです。それがネガティブに受け捉えられてしまうのはとても残念なこと。

動物愛護に対する社会的なネガティブイメージが払拭されれば、より多くの人たちが保護活動に参加できるようになるでしょう。多くの人たちが少しずつ力を出し合えば、一部の人に大きな犠牲を強いている保護活動の在り方も変えることができると思います。

そのためにも、飼い主はきちんと犬たちを取り巻く環境について理解してほしいと思います。そして、保護活動に少しでも興味を持っている人たちは、偏った情報に踊らされたり、ネットで誰かを攻撃するのではなく、自分に無理のない範囲で、寄付をするなり、保護活動のサポートをするなり、なにかしらの行動に移して欲しいと思います。