野生動物保護のため、私たちにできること

私は子どもの頃から動物が好きでしたが、むーたんを迎えたことで動物愛に拍車がかかり、動物たちの住む世界にさらに興味を持つようになりました。今まで犬の殺処分に関する記事はいくつか書いてきましたが、今回はもう少し枠を広げて、過酷な自然環境で懸命に生きる動物たちの生活に触れたいと思います。

考えるきっかけになったのは日本料理

この記事を書こうと思ったのは、両親と妹と一緒に訪れた日本料理のお店でのやりとりがきっかけです。そのお店では、新鮮な食材であることをアピールするために、女将が私たちの目の前で、生きたままの海老を調理してくれました。女将は慣れた手つきで煮えたぎる鍋に生きた海老を入れ、「飛び散るので気をつけてくださいね。」と微笑みながら、ビチビチと激しく暴れる海老を菜箸で押さえつけます。しかし、私は鍋の中で苦しそうに暴れるエビの姿を見て、すっかり食欲をなくしてしまったのでした。

女将がいなくなった後、私はエビの入ったお皿をしばらく眺めていました。すると、私の様子に気付いた妹が、なぜすぐに食べないのか聞いてきたので、「んー…。だってエビ、、苦しそうだったし…。」と答えると、妹は目を丸くしてこう言いました。

「動物好きだとは思ってたけど、ついにそこまでいったんだ。いらないなら食べてあげよっか?」

そして私の譲ったエビをむしゃむしゃ食べながら、「もういっそベジタリアンになれば?」と言っていました。

ベジタリアンは動物に優しい?

ベジタリアンとは

動物や魚などの生き物を食べず、野菜を中心とした食事を摂る人たちのことをベジタリアンと言います。ベジタリアンにも色々なグループがあって、卵を食べるかどうか、乳製品を摂るかどうか、などで細かくグループ分けされています。宗教上の理由だったり、「無駄な殺傷をしてはいけない」という倫理感から、ベジタリアンになる人もいるそうです。

私は実際にベジタリアンの方に会ったことはないので、彼らがどういう気持ちでその道を選んだのか、詳しいことはよくわかりません。でもネットで調べる限り、「動物がかわいそう。だからベジタリアンになろう!」という安直な考えではなく、もっと哲学的な理由が背景にある印象を受けました。

それで動物たちを救えるか?

もし私がベジタリアンになったとしても、スーパーに出荷される肉は減らないでしょうし、動物の殺処分も消えないでしょう。絶滅しかかっている動物たちを救うことだってできません。

それに野菜を作る畑も、もともとは動物たちが暮らしていた場所を潰して作っています。すみかを追われたり、餌場を失った動物たちの中には、絶滅の危機に瀕している種も多く、「野菜を食べること=動物に優しい」とはならないと、私は思うのです。

人間の生活の犠牲となっている動物たち

生き物は生きていく上で、他の生き物の命を奪わなければなりません。しかし、私たちの便利な生活の背景には、捕食以外の目的で犠牲になっている数多くの命があります。そのことをきちんと認識しておかなければならないと思うのです。

捕獲対象になった生き物

人間の捕獲対象になった動物は、その多くが絶滅の危機に瀕しています。「こんな身近な生き物も絶滅危惧種なの?」と驚かされることも多いです。以下、一例です。

サイ

中国やベトナムでは、サイの角がガンをはじめとする様々な病気を治してくれる万能薬であると信じられてきました。科学的な根拠がないにも関わらず、いまだにダイヤモンド以上の高値で取引されるそうです。そのため密猟が後を絶たず、絶滅危惧種となっています。

サメ

海水浴を楽しむ上で怖いのがサメ。しかし海の絶対王者であるサメも、絶滅を懸念されているのです。理由はフカヒレ。フカヒレの原料となるサメのヒレは非常に高く売れるので、世界中で乱獲が止まらないのです。中には、捕獲したサメのヒレと尾だけを切り取って、体は生きたまま海に捨てるという残虐な業者もいます。もちろん、ヒレと尾がなくなったサメは泳げないので生きていくことができません。

胴体だけになったサメが、動けないまま暗い海の底へ沈んでいくドキュメンタリー映画を見てから、私はフカヒレを食べたいと思わなくなりました。

ウナギ

詳しくは「鰻は絶滅危惧種って本当?養殖を食べれば大丈夫?」に書いてありますが、日本人にとって身近な魚であるウナギも絶滅危惧種です。それなのに、毎年夏がやってくるたび、大量にウナギの廃棄が出ているという事実には胸が痛みます。ウナギを食べること自体が悪いことだとは思いませんが、「土用の日だから」という理由だけで大量に市場に出回る日本の文化は、なくした方がいいと思います。

住みかを奪われた生き物

人間の便利で豊かな暮らしが進めば進むほど、自然界へ与える影響も大きくなるということは、頭の中に入れておく必要があります。

ホッキョクグマ

動物園や水族館で大人気のホッキョクグマ。私も大好きな動物の一つです。ホッキョクグマは海に分厚い氷が張るシーズンになると、その氷の上を渡り、アザラシなどを狩って生きています。夏になると氷が溶けてしまうため、その間は絶食期間となり、また氷が張るシーズンになると海へ出て食事をするというのが、ホッキョクグマのライフサイクルです。

しかし、地球温暖化に伴い北極の気温が上がったせいで、海面に氷が張る期間が短くなりました。また、氷が張ったとしても、シロクマの体重を支えられるような分厚い氷ではなく、薄い氷しか張らない場所も増えているそうです。そうするとホッキョクグマたちは狩りをすることができません。長い絶食期間を耐えても、いつまで経っても狩りに出られないため、十分な栄養を補給できず、子孫を残せなくなったり餓死したりするホッキョクグマも出てきているのです。

オラウータン

自然豊かな熱帯雨林に住んでいるオラウータンも、年々個体数を減らしています。彼らの生活を脅かしている原因は、私たちにとって身近な食べ物であるチョコレート。厳密にはチョコレートやアイスクリーム、マーガリンなどに含まれる「パーム油」が原因です。

パーム油はアブラヤシという木になる果実から取れる油で、様々な食品に使われています。皆さんも一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。アブラヤシは、菜の花やオリーブなどと違って年中実をつけるため、他の植物油よりも採取できる油の量が多く、安価で安定的な出荷ができることから、世界中で大量に消費されています。

このアブラヤシは熱帯雨林で育つため、熱帯雨林を伐採して畑が作られます。乱開発が進み、生態系に大きな問題を与えているのです。ボルネオ保全トラスト・ジャパンによると、インドネシアにあるボルネオ島では、ここ50年の間に40%もの熱帯雨林が消滅したのだそう。オラウータンをはじめとして、熱帯雨林を住みかとしている様々な野生動物が、住む場所を奪われているのです。

害獣と呼ばれる生き物

人間が運営する牧場や畑に現れて、悪さをする動物のことを害獣と言います。家畜を食べるクマやオオカミ、畑を荒らすシカやイノシシ、果樹園に現れるハクビシンやアライグマも害獣に当たります。確かに、牧場主や農家の方からすると、深刻な問題だとは思いますが、牧場や農家はもともと彼らの住みかであり、餌場でした。住む場所を失い、食べ物に困っているところに、大好物の食べ物が山ほど元の住処にあったら、食べてしまいたくなるのは当然です。

害獣は、人間の生活に害を与えるため、殺処分されるケースもあります。上記で触れたオラウータンも、アブラヤシプランテーションでは害獣として殺処分されることも多いのです。日本でも、ハクビシンやアライグマを時には追い払い、時には殺処分しながら、果樹園を守っているのです。

私たちにできること

行き過ぎた環境保護・動物愛護は広がらない

私たちの豊かな暮らしは、たくさんの犠牲の上に成り立っています。しかし、今のこの豊かな暮らしを捨ててしまえばいいとは思いません。人間の幸せな暮らしを壊そうとする思想が、人々の間に広まるはずがないからです。

それよりも、環境に優しい資源の開発や、動物を保護するための仕組み作りをしていくことで、人と動物が共存できる道を探る方が建設的なのではないかと私は思います。今以上に環境保護の活動が活性化するためには、私たち一人一人が興味関心を持つことが重要なのではないでしょうか。

まずは現状を知ること

私は子どもの頃からよく動物園に足を運んでいましたが、動物園にいるサイやゾウ、トラなどの動物が絶滅に瀕しているとは思ってもみませんでした。食卓に並ぶウナギが絶滅に瀕していることも、可愛らしいアライグマが害獣として処分されていることも、大好きな沖縄でなんども見かけたウミガメが、プラスチック製品の犠牲になっていることも、全然知りませんでした。

こういった情報をなにも知らないでいると、たくさんの廃棄が出ることも、ゴミの分別をしないことも、なんとも思わないでやり過ごしてしまいます。ちゃんと事情を理解し、きちんと知識を持っていれば、多少なりとも意識できるようになるはず。まずは情報を集めることが必要だと私は思います。

動物に関する情報の集め方

動物に関する情報は色々な手段で集めることができます。ざっくりとした現状を理解するためには、自分でネットで調べるより、以下の方法がおすすめです。

ドキュメンタリー映画

まず、シロクマ好きなら絶対に見て欲しいのが「北極のナヌー」。シロクマのナヌーが生まれて巣穴から転がり出てくるところから、母グマと一緒に大人になり、独立して強く逞しく生きていくところまで描かれています。可愛いナヌーが主人公なので、ネイチャー映画が苦手な方にもおすすめ。環境問題にもしっかり触れつつ、見ていて暗い気持ちにならずに済むのがこの映画のいいところです。とにかくナヌーが可愛いので、動物好きの方にはぜひ見て欲しいです。

それから、ドキュメンタリー映画として有名な「ディープブルー」「ライフ」「アース」「オーシャン」。水を求めて大移動をするゾウの群れや、生存をかけて様々な工夫を凝らす砂漠の生き物、クジラの親子の壮大な旅など、大自然にくらす動物たちの様子と、人間たちが彼らに与えている影響が、これらの映像に収められています。

環境保護団体のメルマガ

組織的な活動を継続している環境保護団体の中には、メルマガ配信を行なっているところもたくさんあります。各団体によって考え方が異なるので、お気に入りの団体を見つけてもらえたらと思うのですが、参考として、私が受け取っているメルマガをご紹介させて頂きます。

どちらも寄付をしなくてもメルマガは受け取れます。私はWWFには寄付をしていますが、グリーンピースはメルマガの購読と、いいなと思ったキャンペーンへの署名だけしています。ちなみにグリーンピースは会員登録をした後に一度だけ、寄付勧誘の電話がかかってきました。送られてくるメルマガはとても読み応えがあり面白いですし、決してしつこくかけてくるわけではありませんが、電話が嫌な方は注意してください。

ニュースサイト

動物たちに関するニュースを取り扱っているニュースサイトがあります。

私がよく見ているのは、以下の二つ。環境問題だけでなく、動物たちの面白い話題から新しい研究の発表など、様々なテーマを取り扱っているので、楽しみながら幅広い情報を収集できます。

最後に

ゴミをきちんと分別する、食べ物を残さない、シャワーを出しっぱなしにしない、など、私たちは環境(野生動物)を守るための行動をちゃんと知っているはずです。しかし、「まぁいっか。」という気持ちから、つい適当に流してしまうこともあるでしょう。ちなみに私の住んでいるマンションにはかなり多くの住人がいて、ゴミ集積所にはいつも大量のゴミが積まれていますが、プラスチックゴミをリサイクル用に分けて出している人はほとんどいません。

多くの人が環境問題や野生動物の暮らしを意識すれば、変えられることもきっとあるはずです。まずは情報を仕入れるところから、はじめてみてください。