「どんくさ子」と「ちんたらお」

私がパパに付けた変なあだ名シリーズの中に「どんくさお」「ちんたらお」というのがあります。実はむーたんパパはかなりの潔癖で、ジッパーやナイロン、タオルの縁などはホコリにまみれている気がするそうで、触れると何度も手を洗う癖があります。むーたんのことは平気で触るくせに・・・。

入浴中にも何度も手を洗い、女の私以上に朝の準備に時間がかかることから、「ちんたらお」というあだ名がつきました。そのくせ、背中や袖に糸くずがついていたり、ドアノブに当たらないように慎重に動いた結果、他の壁にぶつかったりするので、「どんくさお」というあだ名まで付けられてしまったのです。

そういう私も結構なドジをやらかしてしまうことがあり、パパから「どんくさ子」とやり返されることがあります。年末年始の旅行で、そんなどんくさ子とちんたらおが炸裂した事件があったので、思い出に文章で残しておくことにします。

 

 

 

私たちは毎年、広島の厳島神社へ初詣に行っています。2年前から長野在住のむーたんパパのお母さん(私からすると義母)も参加することになったので、私たちは一度品川から新幹線に乗り、一旦名古屋で降りてお母さんと落ち合ってから、みんなで一緒に広島に移動していました。

私たちが名古屋駅に着くのが14時半、お母さんが名古屋駅に着くのが15時、広島行きの新幹線は15時半というスケジュールです。前回、お母さんが駅構内で迷ってしまって少しバタバタしたので、今回は時間にかなり余裕を持たせて予定を組んでいました。

 

 

 

名古屋駅に到着したとき、潔癖のパパがトイレに行きたいと言い出しました。私もトイレに行きたかったので、お母さんの到着を待つ間、トイレを探すことになりました。地下に降りるとすぐにトイレがあったので、先にパパがトイレに行き、その間私が荷物番をすることになったのです。

パパはトイレの後も念入りに手を洗うので、いつも出てくるのが女子以上に遅いのですが、珍しく今回はすぐに出てきました。

ここのトイレは汚いからダメだ!もっとキレイなトイレがいい!

なるほど。そういうことね・・・。

時計を見るとお母さんの到着時刻まで、まだ少し時間があります。パパのお眼鏡に叶うキレイなトイレを見つけるため、私たちは来た道を戻って改札の前を通り過ぎ、反対方向へ歩きました。しばらく歩くと大きなデパートがあったので、そこのトイレを使わせてもらうことになりました。このとき時計を見ると、お母さんの到着時刻まで10分弱しかありませんでした。

デパートは多くの人で賑わっていたので、おそらくトイレもかなりの混雑が予想されます。しかも、かなり大きなデパートだったので、トイレに行き着くまでにも時間がかかりそうです。そこでパパをトイレに行かせ、私がお母さんを改札まで迎えに行くことにしました。

 

 

 

無事お母さんと合流し、私たちはさっきパパと別れた場所で待つことにしました。しかし、パパはなかなか帰ってきません。案の定、トイレがかなり混雑していたそうで、パパが戻ってきたのは15時20分。結局パパのトイレ探しに約50分の時間を要したため、「ちんたらお」の称号は譲れないものとなりました。

急いで3人で改札に戻り、電車の発車時刻まであと5分というところで、ホームに続くエスカレーターの下に来ました。ホームに出ると寒いので、エスカレーターの下で待っていると、すぐ近くにトイレがあることに気付きました。私は結局トイレに行けずじまいだったので、「まだ時間あるし、行ってきたら?」と声をかけてもらって、トイレに行くことにしたのです。

 

 

 

 

改札内のトイレもなかなかに混雑していました。トイレを出て手を洗っているときに時計を見ると、15時32分になっていました。電車の出発時刻は15時33分です。

これはヤバイ!!!(((( ;゚Д゚)))

急いでトイレから出ると、さっきパパたちがいたはずの場所に2人はいません。きっと先にホームに上がっているのでしょう。私は「15時33分発 のぞみ」と表示されている電光掲示板を見て、目の前のエスカレーターを駆け上がりました。新幹線はもうホームに停車して、乗客が乗り込んでいるところでした。

 

 

 

 

新幹線に飛び乗ってから、私は急いでパパに電話しました。パパが出るやいなや、早口で伝えます。

「もしもし?!電車のったよ!今のったよ!!」

 

 

 

パパは驚いたような声で答えました。

「え!?え、お前乗ったの?ちょ、、俺たちまだ乗ってな・・・

プシューッ。

 

ここで扉が閉まりました。

 

 

 

え、、嘘でしょ。。。

 

 

 

 

年末年始の博多行きのぞみは、ものすごく混雑します。切符の発売時期と同時に予約をしないと、3人並びの席なんて絶対に取れません。1〜3号車の自由席は人で溢れかえり、指定席であるはずの4号車まで乗客が流れ込みます。私たちの座る席は4号車だったので、それもあってトイレを先に済ませておきたかったのですが・・・

 

 

 

この時期の指定席はグリーン席も含めて全て埋まっています。

代わりの席なんて絶対に取れません。

年取ったお母さんを何時間も満員電車の中、立たせて移動させることになります。

最悪・・・。

 

 

 

「もうこうなったら仕方ねーよ。お前だけでも座って、先に広島向かってろ。俺らは一本後ので行くから。」

そう言ってパパは電話を切りました。

自分だけ広々と指定席で移動するなんて・・・。

最低すぎる。。

お母さんとおしゃべりしたり、パパとスジャータのアイスを食べたりして、移動時間も存分に楽しむ予定だったので、自分のせいでその時間が消えてしまったこともすごくショックでした。

 

 

 

トボトボと1人で4号車に向かい、切符に書いてある指定席の場所へ着くと、私たちが座る予定だったシートになぜか老夫婦が座っていました。何度切符を見直しても、座席番号に間違いはありません。老夫婦に声をかけようとしたのですが、車両連結部に車掌さんの姿が見えたので、念のため車掌さんに確認してもらおうと、私は車両連結部に向かいました。

 

 

 

 

・・・あれ?

なんでこんなに空いてるんだ??

 

 

 

先ほども説明しましたが、この時期ののぞみはあり得ないほど混雑します。4号車の通路は人で溢れかえり、移動するのも困難なほど。しかし、通路だけでなく座席も異常なくらい空いています。車両連結部の先は自由席のはずですが、自由席もガラガラ。

 

 

 

これは一体、どういうことだ??

もしかして・・・

 

 

 

ちょうど近くにワゴン販売のお姉さんがいたので、聞いてみることにしました。

「すみません、この新幹線って広島行きですよね?」

 

 

 

 

 

するとお姉さんは少し驚いたような顔でこう言いました。

「いえ、東京行きですが・・・」

 

 

 

 

ええーーーーーーーーーーっ!!!

えええぇぇええぇええぇぇえーーーーーーーーっ!!!!

 

 

 

 

えぇええええぇぇえぇええええぇぇえええぇーーーーーーっ!!!

 

 

 

ちょっと待って、ちょっと待って。

え、だってちゃんと15時33分発の電車に乗ったのに・・・。

いやいや、そんなことより次の停車駅って新横浜だよね?

新横浜ー名古屋ってノンストップで1時間半だよね?

え、てことは何?

私は1時間半かけてきた道を、また1時間半かけて戻るわけ?

それでまた1時間半かけて名古屋に行くわけ?

 

 

 

 

 

あー、なるほどねー。

この水が流れてない川、さっきも見たわー。

それで私の席に老夫婦が座ってたのね。

 

 

 

 

 

あはは・・・

あははははは

あーっはっはっはーっ!

 

(涙)

 

 

 

 

さっき電話した時は少し怒っている様子だったパパに、自分が反対方向の電車に乗ってしまったことを報告しました。さすがに憐れんでくれたようで、「こっちは大丈夫だから気をつけておいで。」と優しい言葉をかけてくれました。

こうして私も「どんくさ子」の称号を揺るがないものにしたのです。

 

 

 

 

結局、私が広島に到着したのは21時前でした。

1人目的地から遠ざかる寂しさ。

逆走を知りながら何もできないやるせなさ。

スマホの充電がガンガン減っていく心細さ。

パパとお母さんへの申し訳なさ。

そんな想いに押しつぶされそうになりながら、ひとり耐え忍んだ5時間半。

 

 

 

 

そんなツライ時間から解放された私は電車を降りるなり駆け出しました!

パパとお母さんの待つホテルへ!!

30代の女性が猛ダッシュで駅を駆け抜けて行く様子を見て、周りの人はきっと「何か緊急な用事でもあるのだろう。」と思ったことでしょう。でも大人だって興奮して走ることがあるんですよ!!!

 

 

 

2人に合流すると、パパがニヤニヤしながら「おつかれ。」と言ってくれました。お母さんとパパが乗っていた新幹線は、京都あたりで人がバラバラと降りはじめ、車掌さんに事情を説明して空いた指定席に座らせてもらったそうです。

よかった!!本当によかった!!!

夕食に食べる予定だったお好み焼き屋さんは20時半で閉店してしまったのですが、2人がお持ち帰り用のお好み焼きを買ってくれていました。ホテルの部屋でお好み焼きを食べがら、無事合流できた幸せに浸りつつ、パパに散々バカにされつつ、みんなで楽しく年を越すことができました。

 

 

 

これからは時間がないときにトイレに行くのは絶対にやめます。

あと、来年からはむーたんと一緒に年を越すことにします。以上、旅の思い出でした!