パパは朝からお仕事で、お姉ちゃんはキッチンでパタパタしていました。
むーたんはひとり、ベッドでコロコロ。おふとんが一番モコモコしているところに体を埋めて、パパの枕に小さな頭をもたせかけます。
まだ日差しは差し込んでこないけど、朝ごはんは一通りもらえたし、しばらくお姉ちゃんのお膝の上で眠ったので満足です。お昼ごはんができたら、またお姉ちゃんのお膝の上でひと眠りすればいいので、それまでおふとんに埋もれて待つことにしました。
うーん、きもちいいなぁ。
むーたんが転がっているところから、パパがお仕事している様子が見えます。
パパはいつも見えない何かに向かって話しかけていて、むーたんからするとちょっぴり変な感じです。最初はおかしいと思ってワンワン教えてあげたのですが、何度言ってもパパは聞く耳を持ちません。なのでむーたんはもう諦めてしまいました。
ちょっぴり変でも、大好きなパパがこうやって視界に入っていると安心します。それに、ときたま「おーい、ちびっこ。かわいいちびっこ。」なんて声をかけてもらえると、むーたんはそれだけで嬉しくなってしまうのでした。
パパはいつものように、見えない何かに向かって話しかけています。むーたんはそんなパパの声を子守唄のようにして、夢と現実の間をウトウトしていました。
しゃり、しゃりしゃり、、
パパの笑い声に混じって、むーたんの大好きな音がしました。
パッと飛び起きてキッチンへ飛んで行きます。
寝ぼけていたのでおめめはしょぼしょぼしますが、確かにむーたんの好きな音がしたのです。
しゃりしゃり、しゃり…
「あれ?むーたんきたの?」
きっとお姉ちゃんがむーたんのために、きゅうりを剥いてくれているに違いありません。
もけもけのお顔でむーたんはいい子におすわりしました。
お行儀よくおすわりしたむーたんを見て、お姉ちゃんは皮むきの手を止めてむーたんを褒めてくれました。
「むーたん、どうしたの?かわいいお顔して。もけもけしてかわいいね♡」
むーたんはもう一回おすわりし直して、お姉ちゃんの瞳を真剣に見つめます。
「あ、きゅうりかと思っちゃった?ごめんね、これは長芋なの。むーたんのじゃないのよ。」
ちがった…。
てっきりおやつをもらえると思って飛んできたのに、ただの勘違いでした。
なーんだ。
ベッドに戻っていくむーたんの様子を見て、お姉ちゃんは「むーたん、ごめんよー。」と声をかけてくれました。
むーたんは「だいじょーぶだよ。」と言おうとして振り向きました。目があうとお姉ちゃんが笑ったので、むーたんは安心して再びのそのそ歩いてベッドに戻りました。
今はそんなにお腹が減っているわけではないので、わがままを言う気分にならなかったのです。
しばらくすると、キッチンに籠もっていたお姉ちゃんが机の上とキッチンを行ったり来たりするようになりました。
どうやらお昼ごはんの準備ができたみたいです。
むーたんは再びベッドから降りて、パタパタしているお姉ちゃんの近くでおすわりしました。
「はい、むーたん。来たのね。」
お姉ちゃんは忙しそうに手を動かしながらも、すぐむーたんに気づいて優しい声で話しかけてくれます。
なのでむーたんもちゃんといい子で待っていました。
ごはんをよそって、お味噌汁を出して、お箸を並べたら、お姉ちゃんも椅子に座ります。
「むーたん、お待たせ。」
お姉ちゃんの足元までいくと、そこからびゅーんと持ち上げられて、あっという間にお姉ちゃんのお膝の上に到着!
おふとんも好きだけど、やっぱりお膝の上が大好きなむーたんなのでした♡