気まずい空間

これは少し前のお話。

とっても気まずい思いをした出来事があったので、ここに書き留めておきます。

 

 

 

 

確かあれは1年くらい前の暑い夏の日でした。職場で仲良くしてた後輩のA子ちゃんが、むーたんに会うため我が家に遊びに来てくれたのです。お休みの日に、埼玉から1時間以上かけて遊びに来てくれたというのに、人見知りの激しいむーたんはいつも通りの塩対応。

後輩ちゃんの手からおやつをあげてもらっても、むーたんはおやつがあるときだけいい子にして、食べ終わるとダッシュで逃げます。相変わらず、いぬでなしっぷりを発揮していました。

 

 

 

 

申し訳なくなった私は、みんなで一緒にお散歩にいくことを提案しました。A子ちゃんは犬と一緒に暮らしたことがなかったので、犬とのお散歩は珍しく、楽しい体験になるだろうと考えたのです。

A子ちゃんも「ぜひ行きたいです!」と言ってくれたので、早速準備をしてみんなで出かけることにしました。

 

 

 

 

 

 

我が家はマンション住まいなので、お散歩に行くためにはエレベーターに乗って1階に降りる必要があります。

エレベーターに乗り込むと、むーたんはA子ちゃんの存在をやや警戒しつつも、普段と同じようにエレベーターの中をクンクン見回りしていました。

この程度の警戒レベルなら、問題なくみんなでお散歩を楽しめそうです。

 

 

 

 

 

途中、エレベーターが止まって小さな女の子とお母さんが乗ってきました。

お母さんはぺったんこサンダル、女の子はスニーカーを履いていました。涼しげな帽子をかぶっていたので、この親子もお散歩に出かけるつもりなのかもしれません。

二人の邪魔にならないよう、むーたんを抱き上げようとしたところ、「わぁ!おかあさん!ちっちゃいワンワンがいるよ!」「かわいいねぇ。とってもかわいいねぇ。」と女の子が言ってくれたので、私はむーたんは抱っこしないで奥に寄り、親子のスペースを開けることにしました。

 

 

 

 

エレベーターが動き出しても親子はずっとニコニコしてむーたんのことを見ていました。特に女の子は動物好きな子らしく、むーたんの様子に興味津々。むーたんも少し怖がりながら、お母さんの足元にそろそろと近づいていき、クンクンと匂いをかいでいました。

 

 

 

 

「わぁ!ワンワンこっちきたねぇ!」

女の子が嬉しそうに声を上げます。キャッキャッと笑う女の子に誘われて、つい私たちも頬が緩み、エレベーター内がほんわかした空気に包まれたところで、一階に着きました。

むーたんはまだお母さんの足元をクンクンしていて、お母さんも微笑みながらむーたんに手を振ってくれました。

扉が開き、お母さんが女の子の手を繋いで先に降りようとした瞬間・・・

 

 

 

 

 

「おかあさんのあし、くさかったのかな?」

 

 

 

 

 

 

 

 

想定外の女の子の言葉に、私たちは思わず顔を見合わせました。A子ちゃんはもともと目が大きいので、見開いたせいでまん丸になっています。

言葉の代わりにぱちぱちと瞬きをして、私たちはお互いの気まずさを相手に伝えます。

お母さんは困ったような声で「・・・くさくないよ。」と言いながら降りていきました。

 

 

 

 

 

うちのむーたんがーーーー!!

すみませんでしたーーーーっ!!<(゚ロ゚;)>

 

あれはむーたんなりの挨拶というかなんというか・・・

もちろん全然くさくなんてないですし!!!

あぁ、、本当にごめんなさい〜〜、、、( ̄ロ ̄lll)

 

 

 

 

女の子のあの一言で、空気が一瞬で凍りました。

でも空気を凍らせた張本人とむーたんはどこ吹く風。楽しそうに駆けていく女の子に続いて、むーたんもやる気まんまんな様子でエレベーターをあとにします。

 

 

 

無邪気ってすごい・・・。

そう思った瞬間でした。

 

 

あの時の可愛かった女の子は、エレベーターでの会話なんて覚えていないかもしれません。

でも私の中では衝撃的な出来事としてずっと残っています。これからもきっと忘れることはないでしょう。