私がずっとお家にいるようになってから、むーたんにある変化が訪れました。私がガッツリ外で働いていた時は、鍵をカギ穴に差し込んだ瞬間、玄関の前まで飛んでおむかえに来てくれたのですが、最近はドアを開けても「ただいまー」と声をかけても、ベッドでゴロゴロしたままでおむかえに来なくなりました。このことが私はとても嬉しいのです。
目次
お留守番の長かった幼少期
おうちの中でひとりぼっち
むーたんが来るまで私とむーたんパパは二人暮らしで、どちらも丸一日仕事に出ていました。二人とも朝8時〜9時くらいに家を出て、遅いときは終電まで帰らないこともざらにありました。むーたんをお家にお迎えしてからできるだけ早く帰れるように調整したものの、早くても帰宅できるのは20時頃で、むーたんはいつも長い間ひとりぼっちのお家でお留守番をしていなければなりませんでした。
一緒にいる時は大はしゃぎ
私たちがお家に帰るとむーたんは大はしゃぎです。猛ダッシュで出迎えてくれて顔に飛びつき、おかえりのチュー。ガシッと手で抑えて口の周りをぺろぺろしてくれるのですが、残業でお留守番時間が長くなると、これが甘噛みに変わります。私が着替え終わったのを確認すると、おもちゃをくわえて走ってきて、そこから寝るまで遊び通し。私も長いお留守番をさせていることに負い目があり、疲れていてもひたすらおもちゃを投げ続けました。
遊ぶ時以外も常に私のあとを追いかけて、私がお風呂に入るときはお風呂の前で待ち、トイレに行けばトイレの前で待ち、食事の準備をしているときはキッチンとダイニングを行ったり来たりして、少しでも私の手が空いたのを見つけると飛ぶようにおもちゃを持ってくるのでした。
お留守番カメラの活躍
お留守番をさせている時間が長いので、私たちはいつもむーたんを心配していました。お留守番で寂しい思いをしていないだろうか、雨が降れば雷を怖がっていないだろうか、マンションが火事になったりしていないだろうか、心配することは山のようにありました。そこで私たちはお留守番カメラを設置することにしたのです。
残業が長引いた時にカメラを覗いてみると、玄関が見える位置に置いてあるクッションの上で丸まって寝ているむーたんが見えます。そしてときどきハッと顔をあげて扉の方をじーっと見ているではありませんか。しばらく見つめても誰も帰ってこないことがわかると、悲しそうな顔で目をしょぼしょぼさせ、再び丸まった体の中に鼻先を埋めて目を閉じます。でもまたしばらくすると、ハッとして玄関を見つめているのです。
おそらく、ご近所さんたちの帰宅する足音が聞こえるのでしょう。毎晩こうやって私たちのことを待っているのかと思うと、とても胸が痛くなりました。
こっそり帰ろうとしても…
むーたんを喜ばせたくて、音を立てずにこっそり帰ろうとしたこともありました。でも、どんなにそーっとドアを開けても、むーたんは必ず玄関の前で目を輝かせて待っていました。なんとかサプライズをしたかった私たちは、帰宅直前のむーたんの様子をお留守番カメラで確認してみることにしました。
扉の前でこそこそむーたんパパと話しても、カギ穴に鍵を差し込む時に音がしても、むーたんはクッションから動きません。しかし、カギ穴に鍵を入れてまわす時、どんなに静かに回してもかすかに鳴るカチャリという音が聞こえた瞬間、むーたんはクッションから飛び上がって、玄関まで飛ぶように移動します。他の物音や足音と違って、この音がするときは絶対に私たちが帰ってくることをむーたんは知っていたのです。
毎日毎日長い間ひとりぼっちで、このカチャリという音が聞こえるのを全身全霊で待っているむーたんを見ていると、私は余計に気が滅入りました。帰宅した時のむーたんの喜びが大きければ大きいほど、それまでの時間が長く辛いものだということを知ってしまったのです。
毎日を一緒に過ごすようになって
家の中でも仕事ができるように
そんなむーたんを見ていられなくなり、今年から私は在宅で仕事をする決意をしました。ただ、家にいるとむーたんは必ず遊ぼうとします。そうすると自宅で仕事をするのは厳しいため、私は隙間時間を見つけて外に出て、カフェなどで作業をするしかないだろうと思っていました。
しかし、いざ在宅勤務をはじめてみると、むーたんはすっかり穏やかになりました。確かに遊びたいスイッチが入ったときはおもちゃをくわえて走ってきますが、以前のように常に遊ぼうとはしなくなり、とてもリラックスしている感じなのです。私がトイレやお風呂に入っていると、たまにくっついてくるときはあるものの、普段はベッドの中で一番ふかふかしたところを見つけてそこで丸まって待っているようになり、昔ほど追いかけてくることはなくなりました。家で作業をするのは難しいと思っていましたが、全くそんなことはなく、おかげでずっとお家にいられるようになったのです。
お気に入りの場所はお膝かベッド
在宅勤務になってから、私たちはいつも一緒です。私が仕事をしている間、むーたんは私の膝の上で眠ります。洗濯物をたたんでいる間は畳んだ洗濯物にスリスリして、気持ちよくなってその上で横になります。料理を作っている間はベッドの上で丸まるか、なにかもらえそうな気配を感じると私が見える位置で待機して、キュウリや鰹節、もやしなどのごちそうを入手します。眠くなったらくっついて眠り、気分転換したい時は全力で遊びます。
むーたんは私のお膝の上が大好きみたいですが、その次にお気に入りなのがベッドの上です。中でもおふとんが重なって一番もふもふしているところを上手に探し出します。私が家事をしている時や一人でぐっすり眠りたい時などは、いつもベッドの上で気持ち良さそうにゴロゴロしています。
おかえりの仕方にも変化が…
私は毎朝むーたんパパを職場まで送っているので、朝は早めに家を出ます。でも私がすぐに帰ってくることを、むーたんはちゃんとわかっているようです。以前は家を出ようとするとスリスリして甘えてきたのですが、今はあまりそういうことをしなくなりました。また、私が家に帰ってもベッドの上でゴロゴロしたまま「はやくなでなでしてー」と甘えてくるか、いかにも、ついさっきまでで爆睡してましたみたいな表情で、「おかえりー」とのたのた歩いて出迎えてくれます。
ただ、たまに私が長い間家を空けるときは、やっぱりドアを開けると玄関の前で待っています。むーたんの寂しい気持ちがたまると、私たちの帰りを今か今かと待ち構えるようになり、このようなおかえりの仕方になるのだと思います。だからこそ、私はお出迎えしてくれない方が嬉しいのです。
最後に
不安そうに玄関を気にするむーたんも、すっ飛んでお迎えに来てくれるむーたんも、とても愛おしくて可愛いのですが、爆睡していた様子が伺える寝癖ボーボーの顔や、安心しきっておふとんの上でころーんとお腹を出している姿の方が、私はとても幸せな気持ちになれます。おうちに帰った時にむーたんがお迎えに来てくれない時こそ、思い切って在宅に切り替えて本当によかったと感じる瞬間なのです。